May I hold your hand?
□シンパシィ・テレパシィ
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「ねぇ、ねぇ。鬼男君はさ、俺のことどれくらい好き?」
ホローチョコレートを齧りながら精一杯の愛と期待と、あとノロケを少々含ませながら
俺は隣に立っている鬼男君に話しかけた。
当の鬼男君は、というと
俺の言葉に対してびっくりするくらい露骨にめんどくせぇ、という顔をした。
(あれ、俺ら恋人同士だよね)(なにこの扱い)
「…今俺ものすごく傷ついたんだけど」
「え、表情に出てました?」
「そらもう、露骨に。これでもかってくらいに」
反抗の意を込めて鬼男君を睨んでみても、まぁそれは無駄なことで。
相変わらずの涼しげな顔で書類の整頓を始めやがった。
「……はぁーあ。なんだよ、もう。
浮かれてる俺がバカでした」
若干(というかかなり)いじけながら食べかけのホローチョコレートを齧る。
そうしながら鬼男君をちらりと見ると俺には目もくれずに一心に仕事をしている。
恋人より仕事か、この鬼!…いや、鬼だけどさ。
はぁ、とため息を吐く。
鬼男君はかっこいいし、仕事もきちんとこなす完璧な部下だし、あ、あとちゃんと気配りも出来てて、俺の自慢の恋人で…
「俺はねぇ、鬼男君のこと、もうめちゃくちゃ好きなんだよ。
どれくらい好きかって言うと、…ええと、良いたとえが思い浮かばないんだけど…」
いろいろと(傍から見たら)恥ずかしい考えを巡らせていると、鬼男君が観念したようにこちらに向き直った。
その表情がどこか嬉しそうだったのは俺の見間違いでないと信じたいけれど。
「大王」
「…え、何?ごめん、そういうつもりで言ったんじゃなくて、嫌なら無理しなくていいっていうか、」
「僕は、…大王が思っているよりもずっと、貴方のことが好きです。愛しています。
…これでは、満足に足りませんか?」
鬼男君は、少し照れながら、でもきちんと俺の目を見てそう言ってくれた。
ぶんぶんと首を横に振ると、鬼男君はふっと笑って、仕事に戻りますよ、とそう言った。
ねぇ、俺今すごくしあわせだよ、と心の中で呟いて、そうして鬼男君を見ると彼も俺を見てニコリと笑った。
僕もしあわせです、なんて言うように。
こういうところでテレパシーが通じてもなぁ、と思ったけれど、やっぱり好き、は声に出して言ってもらいたいから、まぁいいか。
シンパシィ・テレパシィ
(好きくらい、恥ずかしがらずに言ってほしいんだけど)(アンタが恥ずかしくなるくらい言ってやりましょうか)