May I hold your hand?

□ノンシュガー・ミルクティータイム
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仕事が一段落着いたところで、大きく伸びをする。

今日は疲れたね、と鬼男君に声を掛けたら、そうですね、と少しだけ笑って返してくれた。

「仕事も大方終わりましたし、お茶でも淹れましょうか?」
「うん、ありがとう。今日は何か楽しみだ」

少し待っていてくださいね、と鬼男君は言って部屋の奥へと足を進めた。



いつも、仕事が終わると二人でちょっと遅いティータイムを過ごす。
ストロベリー・タルトやチーズケーキ、柏餅やみたらし団子。

二人で他愛もない会話をしながら色とりどりのお菓子に手を伸ばす。



お菓子は、いつも鬼男君が用意してくれる。
ケーキや和菓子もそうだし、飲み物だって彼が自分で選んでくれる。
(でもあまり味は確かめない)(それで一昨日のホット・抹茶タピオカティーは大失敗だった)

俺はそんな鬼男君と過ごす時間が大好きだし、彼もそうであって欲しいと思う。



しばらくすると、鬼男君がミルクティーとモンブランをもって来てくれた。

「今日はミルクティーにモンブラン!いいね、すっごい美味しそう」
「今日は洋菓子の気分でしたので」
「俺の気分への配慮はないの?」
「僕達一心同体なんで」
「…上手く逃げやがって」

二人で顔を見合わせて笑う。



でも、本当に、一心同体と言ってもいいくらいに、鬼男君は俺の世界に浸透している。

例えば、鬼男君が非番の日でも、二人分のティーカップを用意してしまうとか、
鬼男君によく似た死者が来たときにはクスリと笑ってしまうとか。

それくらいに鬼男君は俺の世界の一部になっているし、多分これからその割合は大きくなっていくと思う。

「…何ニヤニヤしてるんですか」
「ん、何か幸せだな、と思って」
「そうですか」
「うん」

そっけない返事だな、と思ってちらりと鬼男君を見ると鬼男君も(ニヤニヤと)微笑んでいた。



きっと、これからずっと二人で笑いながら幸せな時間を過ごすのだ。

半分になったモンブランをほったらかしにして、しょうもない話を延々として、
とっくに冷めたミルクティーに口をつけながらも俺は幸せなんだと思う。



ノンシュガー・ミルクティータイム

(俺らの毎日が甘ったるいから、砂糖なんて要らないのさ)

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