収納棚:暁

□お年玉
1ページ/1ページ

「なぁかくずー、おと」
「やらん」
「まだ最後まで言ってねえだろォ!」
「どうせお年玉だろう。もう正月は過ぎた」
「正月じゃなくてもいいじゃねぇかァ!」

やらんやらん
貴様にやる金などない。

「なぁかくずぅー」
「もう一週間すぎているからいいだろう」
「一週間すぎてるからこうしてくれって言ってんだろォ」
「やらん」

正月に何もなかったと思ったらあとでせがむつもりだったのか。

「なぁ俺最近任務頑張ってただろォ?くれよー」
「やらんと言っているだろう。欲しかったら正月にいえば良かったものの」
「だって正月は里帰りしてたし」

抜け忍が里帰りしていいのか。

「知るか。抜け忍のくせして里帰りするお前が悪い。よく帰ろうと思ったな。」
「久しぶりに湯隠れ温泉に入りたくなったんだよ。それに里帰りだったらサソリだってそうじゃねえか。」

そういえば、そうだな。

「あいつは里に身内がいるからたまには帰らねばならんのだろう。」
「じゃあイタチはどうなんだよ。あいつ弟がいるんだろ?」
「あいつの弟も里を抜けているから里帰りの必要はない」
「うわっ兄弟揃って抜け忍かよ」

うちは一族は創立者兄弟も抜け忍だったはず。弟の方もだったかは忘れたが。

「うげっ先祖代々抜け忍かよ」
「うちはの皆が皆抜け忍というわけではなかろう。」

一族全員が抜け忍なんてありえないだろう。
もしそうだとしたら、自分たちだけの里を作っているだろう。

「っつうか弟も里にいないんだったら、なにしに木の葉に行ったんだよ」
「……あいつ木の葉に行っているのか」
「そうだよ、角都知らなかったのか?」

知るかそんなこと

「イタチさんならもうそろそろ帰ってきますよ」
「おっ鬼鮫ちゃん。お年玉くれよ」
「あげませんよ。あとイタチさんはお墓参りに行ったついでに、久しぶりに弟さんに会いに行ったそうです」

端から見れば、いい兄だが実際はただのブラコンだ。
きっと墓参りの方がついでなのだろう。

「オイラも里帰りしたぞ、うん!」
「嘘おっしゃい。あなたお正月は私たちと一緒にお餅とみかんを食べたでしょう」
「バレた…」
「なぜバレないと思ったのですか…」

そもそもデイダラが里帰りしたら大騒ぎだろ。

いや、暁の人間が里帰りしたらどこでも大騒ぎになるはずなのだが。

「飛段、よく無事で帰ってきたな」
「うぇ、なんだよ気持ち悪りぃな。」
「勘違いをするな。よく里が大騒ぎにならずにすんだなという意味だ」
「な、なんだ、そういうことかよ。元々湯隠れは好戦的じゃないって知ってんだろ?だからそんな騒ぎにはならねえんだって」

ふむ、まさに平和の象徴だな。
変に戦闘して温泉を壊したりもしたくないだろうし、俺自身もして欲しくない。
あそこの温泉は結構好きだからな。

「そういえばよ、鬼鮫ちゃんは里帰りとかしねェの?」
「私が帰ったらそれこそ大騒ぎですよ。むしろ大騒ぎではすみません。下手したら殺される可能性がありますしね。」
「よっ大名殺し!」

褒められたものではないと思うが。

「角都は?」
「オレは帰る必要がない」

身内もいないしな

「何でだよ、墓参りとかいかねぇの?」
「いかん。墓の場所なんか忘れた」

そして何より里の住民に会いたくない。
あんな里に誰がいくか。

「ふーん、あ、イタチお帰り」
いつの間にかイタチが帰ってきていた。

「ん」
「おかえりなさい、イタチさん」
「あぁ、ただいま」
「おかえり」
「ただいまです、角都さん。これ、お土産です。」

そういって包みを渡してきた。
もし栗羊羹だったら……うっ

「安心してください、栗羊羹ではありませんから」

もしそうだったらどうしようかと迷っているところで、イタチはそういった。

「そうか、すまないな」

栗羊羹の可能性は消えたということで、安心して紐を解いてから包みを開ける。三色団子とみたらしとあんこが一箱ずつ入っていた。
どれを先に食べようか。

少しばかり悩みあんこを選ぶ。

「お、なぁ、イタチ。オレも食っていいか?」
「あぁ、デイダラと鬼鮫も食べていいぞ。ちょうど一本ずつ食べれるように買ってきたからな」
「やったぁ!オイラあんこから食う!」
「よしっじゃあ俺はみたらし」
「ありがとうございます、イタチさん。」
そういって鬼鮫も三色団子から食べ始めた。



もちゃもちゃもちゃ

もちゃもちゃ

ずずっ

もちゃもちゃ

ずずっ

「飛段、うるさいぞ」
「あ?んなのお前だってそうだろうが」
「オレは団子を音を立てて食べていない」
「けど茶は啜ってるじゃねえか」
「茶はいいんだ」
「んだよそれ」

大体からものを食う時は口を閉じろといつも言っているだろうが。

「イタチさんもですよ」
「……咀嚼音しているか?」
「はい」
「そうか、すまない」
「いえ」

イタチは物分りが良くていいな。

「うちの相方と違って」
「あ?なにがうちの相方と違うんだよ」

どうやら声に出ていたらしい

「…物分りの良さだな」
「んなもん俺の方がいいっつうの」
「いや、お前は俺が何か言うたびに言い訳ばかりをしている。そういうのは物分りがいいとは言わない。」

「んだとコラぁ!」
「やめなさい、飛段」
「んだよ、鬼鮫ちゃんは角都の味方かよ!」
「誰の味方でもありません。角都さんも飛段の気に障るようなことを言わないでください。」

オレは声に出したくて出したわけではないぞ。

「言い訳しないでください。それではあなたも人のこと言えませんよ」
「なに?」
「そうじゃないですか。私からしてみれば二人とも言い訳ばかりの物分りの悪い人です。」
「こんなガキと一緒にされては困る」
「じゃあ言い訳しないできちんと謝ってください。飛段もです」

ちっ、仕方ない。

「はぁ?なんで」
「いいから早く!」

飛段が言いかけると鬼鮫が怒鳴った。
これは早いうちに謝らなければアジトが壊れるだろう。
デイダラとイタチは鬼鮫の水遁をうけまいと団子を抱えてそそくさと出て行ってしまった。

「どうしたんです、早く謝ってください。」
「…………」
「…………」
「早くしなさい。アジトが壊れてもいいんですか」
そういいながら鬼鮫が鮫肌に手をかける。

……こいつに謝罪をするのは癪だが、アジトが壊れるのはさらになので謝ることにしよう。

「……すまない」

飛段はそっぽを向いたままだ。
人が謝ったというのになんだその態度は、と言いそうになったが何とか食い止めた。
言ったら今度こそ鬼鮫がブチ切れるからな。

「飛段、角都さんは謝りましたよ」
「……オレも悪かった。ごめん」

そっぽを向いたままだったが、一応謝った。

「……あぁ」

俺も謝られたので許す。

「はあぁぁ…………」

鬼鮫が大きなため息をする

「すまないな、鬼鮫。迷惑をかけた」
「まったく、本当ですよ。少しは私にも気を使ってください。」
「あぁ」
「鬼鮫ちゃんよォ、オレも悪かったよ、許してくれるか?」
「えぇ、もういいですよ。デイダラ達も、もう入ってきていいですよ」

デイダラとイタチは扉付近にいたらしく、ちょろっと顔を出す。

「……本当にもう大丈夫かい?うん」
「大丈夫ですよ」
「大丈夫だってさ、イタチ」
「…ん」

イタチとデイダラはちゃんと団子を持って帰ってきた。

「あなた達団子まで持って行ったんですか」
「鬼鮫の水遁で食えなくなるのは勘弁だからな」
「すいませんねぇ」

すると鬼鮫はチラリとオレの方を見る。

"お年玉を渡すなら今がチャンスですよ"

そう、目で訴えてきた。

「……迷惑をかけたからこれをやろう」
「んぁ?おぉっお年玉あるじゃねえかァ!」

お年玉は一応用意はしておいたのだ。ただいつ渡せばいいかわからなかっただけだ。

「お、オイラのは?!」
「ちゃんとある。イタチ、お前のもある」
「ありがとうございます」
「無駄遣いするんじゃないぞ」
「わかってるって、かーくずぅー!」
「三人とも良かったですねぇ」
飛段と和解し、お年玉も全て渡したのでゆっくりと団子を食う。

イタチが勧める甘味処の団子だけあってうまいな。
団子をすべて食し、オレは疲れを取るため、部屋に戻りベッドに寝転んだ。


後日、お年玉が去年より減っていると文句を言われたが、オレは知らんふりをした。

それでも、ぎゃーすか言うもんだから"せっかくやったのに文句をいうやつにはもうやらんぞ"といったら謝ってきたのでよしとしよう。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ