収納棚:暁

□夜中にやつがやってくる
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しゃんしゃんしゃん、しゃんしゃんしゃん
どこからともなくそんな音が聞こえる。

そうか、明日はクリスマス。きっとサンタさんが来たんだ。

だけどサンタさん、夜中に鈴の音を響かせて来るのはいいけど、そのまま部屋の中に入ってこないでくれよ、うん。
鈴の音が聞こえるということは、トナカイさんも一緒にいるということ。
トナカイさんは、お外でサンタさんを待つもんだぞ?それに足跡がついちゃうじゃないか。蹄の跡が。

"ぐっすり寝ていますねぇ"

サンタさん、寝顔をのぞくのはよしてくれ。さすがのオイラも知らないおじさんに寝顔を見られるのは嫌だぞ、うん。
うーん、と目をこする。

"おい、起きたのではないか?"

うん?サンタさんが、二人…?
ゴロンと寝返りを打つ。

"クククッ大丈夫だろ。こいつのことだ、余程の事がない限り起きやしねえよ"

うーん、まだいる。
サンタさんは実は一人じゃないのか?
そう、なのか。そうだよな。じゃないと世界中にプレゼント配れないもんな、うん

「ん……」

今何時かと思い、重い目を開き、時計を見ようと頭を動かす。

「おや、起こしてしまいましたかねぇ」
「サソリ、お前のせいだ」
「何でそうなるんだよ」

サンタさんの名前はサソリというらしい。
サソリといえば、赤砂のサソリ。
そうか、旦那はサンタさんだったのか。

「……って、そんなわけないだろ、うん」

サンタさんらしき人物が3人いるにもかかわらず、独り言のように言い捨て、再び布団に潜る。
ちなみに時計は見つからなかった。
というより、時計の方を向く前にまた眠気が襲ってきたから諦めた。

"……また寝たみたいだな"
"さ、起きないうちに置いて早く出ましょう。見られたら意味がないですしね"
"そうだな"

がさごそ
がさがさ

"よし、これですべて完了ですね"
"まったく、手間のかかるガキ供だぜ"
"ご苦労だった。明日もこの格好でたのんだぞ"
"っつうか誰一人見てねえのにこんな格好する意味あったのかよ"
"雰囲気ですよ、サソリさん"

そういうと赤鼻ならぬ、赤髪のトナカイと青白い鮫顔のサンタと頭巾の上から帽子を被り、マスクをつけた怪しいサンタは部屋をあとにした。

しゃんしゃんしゃん、しゃんしゃんしゃん
今年もあなたの元へプレゼントを届けにきましたよ。

世界中の大人子供に、最高のプレゼントを

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