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□大晦日の出来事
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大晦日の夜の出来事

デイダラ、イタチ、飛段の若者組が寝静まったあと、オレは鬼鮫と一緒にコタツに入って暖をとっていた。
サソリは傀儡の大掃除と言って昼から部屋にこもりっぱなしだ。きっと疲れて寝ているのだろう。傀儡だが。

ミカンをむいていると鬼鮫が口を開いた。

「角都さん、明日は覚悟しておいた方がいいですよ。」

やはりきたか

「……あぁ、わかっている。それなりの対処法は考えてある。」
「お願いしますよ。あの子たちはおじいちゃんからのお年玉を一年で一番楽しみにしているんですから。」
「鬼鮫、お前はオレをなんだと思っている」

「暁のおじいちゃんですかね」
「………」

知っての通りオレには孫どころか、娘も嫁もいない。
いたとしても嫁の方はすでにこの世にいないだろう。

「まぁ、あの子たちには一万程度でいいでしょう」
一人心の中でつぶやいていると鬼鮫がそんなことを言い出した。

「おい、鬼鮫、それは本気で言っているのか。」
「え?あぁ、はい。少ないですかね。あ、でもデイダラはもう少しあった方がいいかもしれませんね。」

いや、ちょっとまて。

「イタチさんも一万くらいでいいでしょう。」

まて、そんな金どこから

「飛段は最近任務も頑張っていたようですし、二万くらいですかね。」

「おい鬼鮫っ」
「はい?」
「お前、その金はどこから…」
「角都さんのお財布に決まっているじゃないですか。」

やはり…

「オレの財布にそんな金はないぞ」
「えっ」
そもそもなぜオレの財布から出さねばならんのだ。

「だっておじいちゃんですし…」
「お前が出せばいいだろう。」
「わ、私はまだそんな年じゃありませんよっ」
「お年玉に年齢など関係ない。」

だいたいから老人から金銭をたかるというのがなぜ文化として定着しているのだ。

「いや、でも、やっぱおじいちゃんからもらった方が嬉しいのでは…?」
「ではお前が金を出してオレがその金を渡す。これなら問題なかろう」
「おおありですよっおじいちゃんの財布から出たお金が欲しいんですから」
「あいつらに誰の財布から出た金かなんてわかるはずないだろう。そもそもあいつらに万単位でやる必要がないだろうが」

「じゃあどのくらいが妥当なんです?」
「数千、もしくは500円くらいでいいだろう」

そういうと鬼鮫の目はこれでもかと言わんばかりに見開かれた。

「少なくないです?あの子たちももう子供じゃないんですから…。数千はともかく、500円は少なすぎますよ。」
「オレにとってはまだまだ子供だ。それと今オレの財布には二万しか入っておらん。」
「バイトしているじゃないですか」
「最近高額な賞金首が見つからなくてな。あれだ、スランプだ。」
鬼鮫は賞金首を狩るのにスランプなんてあるのか、と言いたげな顔をしている。
すると、がらりとリビングの扉が開く。

「うおっ、な、なんだよ、てめえらまだ起きてやがったのかよ」
一瞬ビクッとしたが、平然を装って部屋に入ってくるサソリ。

右手にはビデオらしき何かと左手にはティッシュ箱、それに毛布まで抱えている。

「あの、サソリさん、右手に持っているのはなんですか?」
「な、なんでもいいだろっ」
そういってと右手を後ろに隠す。

「左手のティッシュは何に使う気だ」
「べべべつに、何に使うってわけじゃねえよ。ここのティッシュが減ってきたから詰め替えようかとか思ってな。」
「ティッシュは詰め替えるものじゃないぞ」
「んなこたぁわかってるっつうの!と、とにかく出てけよ」
「なぜだ」
「ティッシュを替えるだけなんでしょう?というか、ここのティッシュ箱は取り替えたばかりですよ」
そういえば新しくなっているな。

「も、もういい!オレは寝る!!!このビデオとティッシュはお前らが好きに使いやがれチクショーっ」
そういってビデオとティッシュを投げ捨て、逃げて行った。

「あいつは寝る必要があるのか」
「ないと思いますがねぇ」

少しばかり言葉を交わし、サソリが投げたビデオを拾ってタイトルを確認する。

「…………」
「どうされまし……あぁ」

黙り込んだオレを覗き込んだ鬼鮫もビデオのタイトルを確認して黙り込む。

これはいわゆるAVというやつだな。

「サソリさんは新年をこれで迎える予定だったんでしょうか」

そういいながら鬼鮫はテレビをつけビデオをセットする。

「おい、みるのか?」
「え、だって中身気になるじゃないですか。」
そして再生ボタンを押す。

タイトルのあとにでてきたのは初詣にきた女の着物を脱がそうと企んで、神社の境内の隅に隠れる男の姿。

「いきなり始まるのか」
「初詣にきた人を襲うだなんで、とんでもない犯罪者ですね。サソリさんはこういうのが好きなのでしょうか。」
「オレ達も人のこと言えないがな」
「すいません、私強姦はしたことありませんので……」
「犯罪者という意味でだ。強姦なんてオレだってしたことないっ」

しばらく見ているとまたリビングの扉が開いた。

「うぉっお前ら結局見てんのかよ」
「結局ってなんですか。少しばかり中身が気になっただけですよ。」
「それに見ないとはいってないしな。というかなぜ戻ってきた」

ビデオを取りにきたのか

「別に何でとかねえよ。傀儡のメンテナンスも終わったし暇だったからこっちきただけだし」

あさっての方向を向きながら言う。

「サソリさん、これ返しますよ。私の趣味ではないので」
「オレもだ」

デッキからビデオを取り出しサソリに渡す。

「な、なんだよ、せっかくお前らが好きそうだからって買ってきたのによぅ」

わざわざ買ったのか

「だが趣味でないものでは抜けん」
「同じく。というかあなたの趣味でしょう」
「ぐぬぬ……もういい!オレは寝る!!寝る必要ねぇけど寝てやる!!!おやすみ!」
「あぁ、おやすみ」
「おやすみなさい。ちゃんとベッドで寝てくださいね」
わかってるっつうの!と言い残してでいった

「……あいつの部屋にテレビでもつけるか」
「えっ本気で言ってるんですか?」
「冗談だ」
「ですよね」

そろそろ眠くなってきたな
「……寝るか」
「くあぁ……そうですね」

オレと鬼鮫はリビングの電気を消し各々の部屋へと戻って行った。

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