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□春はまだですか
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春だ。
寒い冬も終わって暖かい春がやってくる。

…………はずなんだけど。


「くっそォ……まださみぃじゃねぇかァ……」


天気予報によれば暖かくなるどころか、まだまだ寒い日が続くとか何とか。

「なァ、角都ゥ」
「何だ」
「さみィ」
「知るか」

チクショウ、さっきからお前がコタツ占領してるからオレが入れねぇんだよ。

「なァ、かぁくずゥ」
「何だうるさい」
「オレもコタツにいれてくれよォ」
「お前はまだ若いんだ。それに年中上半身裸でいるならコタツに入らなくても平気だろう。」
「んなこたねぇって」

オレだってさみぃんだよ。

「お前、そんなんだから老害とかいわれんだぞ。」
「オレは老いぼれてなどいない。そこらのやつらと一緒にするな」
「だけどお前木の葉のやつに“ただのズレた老いぼれだ”って言われたじゃねぇか」
「なぜお前が知っている」

話しながらオレがコタツに入り込もうとするも阻止される。

「なぁ、入らせてくれよ。入らせてくれねぇならストーブつけっぞ。」
「駄目だ、灯油代がかさむ」
「んだよ、じゃあ入らせろよ」
「隙間が開いて寒くなるだろう。」
「けちくせぇじじいだなァおい」

コタツの周りをうろちょろしてると扉が開いた。

「おや、二人とも喧嘩でもしているのですか?」
「お、鬼鮫ちゃん。察しがいいな。角都がコタツに入れてくれねぇんだよ」
「おやおや、角都さん、コタツは皆のものですよ。飛段も入れてあげてください。」

そういいながら鬼鮫ちゃんはコタツに入る。

って

「なんで鬼鮫ちゃんは入っていいんだよ」
「鬼鮫は任務から帰ったばかりだから寒いだろう。」
「俺だってさみぃよ」
「まぁまぁ、皆で仲良く、暖まりましょうよ」
「ほら、鬼鮫ちゃんだってこういってんぞ」
「…………ちっ」

舌打ちしながらもスペースを空けてくれた。

「おっしゃっ」

布団をめくりはいろうとすると

中には
「にゃぁーっ」

こげ茶色の
「……なんで」

ふわふわした
「…………」


「なんで猫がいるんだよ」

猫がいた。

「…………昨日、拾ってきた」

だから入れてくれなかったのか。

ちょっとまてよ、でもやっぱなんで鬼鮫ちゃんは入れたんだよ。

「鬼鮫なら言わなくても分かるだろう」
「まぁ、大体の気配では分かりますけど……」
「最初から言ってくれればよかったじゃねぇか」
「お前は危険だからな。猫ちゃんが蹴られたりしたらかわいそうだ」

おいおい、オレはそんな無用心じゃ……って

「お前、今なんつった?」
「……子猫が蹴られたらかわいそうだろう」
「ちげぇだろ。お前今、“猫ちゃん”ってはっきり言ったろ」
「…………」

角都の口から“猫ちゃん”って

「角都さん、猫お好きなんですか?」
「……悪いか」

そっぽを向いて言うその顔は、少し赤い。

「いえ、悪くはありませんが、角都さんも“猫ちゃん”なんていうんですねぇ」
「…………」
「ゲハハ、お前、実はかわいいもん好きだったりすんのかァ?ぷっゲハハハハッ」
「黙れ飛段。殺すぞ」
「ゲハハハ、殺せるもんなら殺してほしーよ、ホント。クククッ」
「貴様……」
「まぁまぁ」

ひーっ腹いてぇ

「はぁ……笑いすぎて腹いてぇ……ゲハハァ……」
「貴様、これ以上ミーちゃん……子猫の事笑ったらただじゃおかないからな」

別に猫の事笑ってねぇしっつうか

「今度は“ミーちゃん”かよっ。ゲェハハハハハハッうぐっぐえっほげっほ」

思わずむせる

「飛段、笑いすぎですよ……ぷっ」
「鬼鮫……」
「す、すいません、もう笑いませんから地怨虞しまってくださいよっ。圧害も、単独行動しようとしないでください!」
「鬼鮫ちゃん狙われてんなァ!ゲハハハハ!!」
「あなたねぇ……いいかげんにしなさいよ!!ミーちゃんはとりあえず外に出てっ」
「みゃー」

オレが小馬鹿にすると鬼鮫ちゃんがミーちゃんを部屋の外に出し、印を結び、角都の地怨虞が標的をオレに変える。

「ゲハハ……ア?」

「飛段、覚悟しろ」

えっ

「飛段、もう謝ったって許しませんからね」

え、ちょっとまって

「地怨虞・一斉破火!!」
「水遁・爆水衝波ァァ!!」

「いぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


ジャシン様、今日に限って地怨虞と鬼鮫ちゃんの水遁のおかげで暖かく(というかぬるく)すごせます。

これも毎日祈りを欠かさなかったおかげですよね。

あとミーちゃんは暁内で飼うことに決まりました。名前はミーちゃんのままです。

角都が一人でいるとき猫なで声でミーちゃんをもふもふしています。ちょっと気持ち悪いです。



あぁ、ジャシン様、本当の春はまだですか。

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