・2 (完結)

□第四十四章
3ページ/6ページ









ガラッと食堂の扉が開く
そこには少し顔色の悪い名無しさんの姿


土方はその姿を確認するなり、勢い良く名無しさんに駆け寄った
そしてガバッとお姫様抱っこをする


あまりの事に名無しさんは目を見開く





『え?!な、なんですか?!』



「いいから・・・少し黙ってろ」





そう言うとそのままズンズンと名無しさんの部屋まで運んで行った






「あ〜・・・こりゃ面白い事になってきやしたねィ?」


「いや鬼ですかアンタは、何人の一生に関わる事を面白がってるんですか」


「名無しさんは本当に妊娠してると思いやすかィ?」


「さァ・・・でも相手は副長ですし、そういう事しててもちゃんと責任ある事をしてると・・・」


「ようはちゃんと避妊してるって?」


「ぅ・・・はい」


「これだからザキは地味なんでさァ」


「関係ないでしょォ?!」


「土方さんの名無しさんへの執着はハンパねー。無理やりにでも自分に繋ぎとめておくために避妊なんかしてるなんて思えねーでさァ」


「あァ・・・そう言われれば確かにそんな気もしますが・・・」


「結果が楽しみですねィ」


「・・・・・・・隊長も名無しさんちゃんを繋ぎとめたいんですよね」


「あ?」


「名無しさんちゃんに子供がいれば、土方さんと一緒になるし、そしたら此処から離れなくなりますもんね」


「・・・・・・地味の癖にうるせ―でさァ」


「これでも監査なので」




自身満々な山崎に沖田は舌打をすると食べ終えた食器をもって席を立って行った




「・・・みんな名無しさんちゃんが大好きなんだよな・・・」



一人残された山崎はポツンと独り言を言うとお茶を啜った



















一方、名無しさんは土方に連れられてパトカーに押し込められていた




『ちょ、何なんですか!?何処行くんですか!?私まだご飯食べてないんですけど?!』



名無しさんの問いを無視して土方は車を発進させる

無言で真剣な表情の土方に名無しさんも口を紡ぐ










名無しさんが妊娠・・・・



あり得ない話じゃねぇ
なぜなら俺は一度も避妊なんかしちゃいねぇ
孕んじまってもいいなんて自分勝手な考えでいた事も認める

名無しさんが妊娠?


名無しさんの腹ん中に俺の子供がいるってことだよな?
俺と名無しさんの・・・




ドクンドクンと心臓が早打ちする





俺が親?
俺がオヤジ?


ヤベェ・・・ちょっとニヤケちまう





これで名無しさんとずっと一緒に居られる

これで名無しさんは俺から離れねぇ

これから俺にも家族が出来る?





何とも言えない感情に土方は言葉が出なかった







でも、まだ分かんねぇ
本当に妊娠してるのかもわかんねぇ
だから落ち付け
落ち付け俺
まずは病院だ!
病院に行って検査を!!!




心なしか何時もより安全運転で走らせる車



グルグル回る思考の中、気が付けば車は大江戸病院の前まで来ていた





病院の駐車場っで止まる車に名無しさんは首を傾げる




『病院?え?そこまで具合悪くないですよ??』



慌てて帰ろうと言う名無しさんに土方は真剣な目を向けて言った











「お前・・・・その・・・月の物はちゃんと来てるのか?」








その質問に名無しさんが目を丸くさせ顔を真っ赤にした






『は?!え!?いきなり何言って・・・』








「お前、妊娠してねぇか?」









その言葉に更に目を丸くする名無しさん
でも、それはすぐに悲しそうな笑みに変わる








『・・・・土方さん・・・私、人間じゃないんですよ?』



「・・・・・・・・」



『子供・・・出来る訳ないですよ・・・兵器が・・ドールが子供なんて・・・』




今にも泣き出しそうな名無しさんを土方はギュッと抱きしめると優しく背中を擦った





「でもよ?月の物はちゃんとなるんだろ?それは子供を産む為の準備だろ?」





土方の腕の中で小刻みに震える小さな肩
土方はその震えが止まる様に強く抱きしめる






「お前は人間だ、そして女だ。それ以外の何物でもねぇ」





そう言うとチュッと軽いキスを名無しさんに送
った





「もしかしたら俺の早とちりかもしんね―けど・・・検査、受けてこねェか?」




優しくあやす様に囁きかければ、名無しさんは涙を流しながらコクンと頷いた
頬から流れ落ちる涙が土方の隊服を濡らして行く
土方はその涙をグイグイと吹いてやると、とびきりの優しい顔で笑った











診察室の前
名無しさんは土方に待っている様に伝え、一人診察室へ入って行った


一緒に入ると聞かなかった土方を引きとめるのはとても大変だった




一通り検査を終え、医者から診断結果を貰う






















「おめでとうございます、妊娠6週目ですよ」




















次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ