・2 (完結)

□第四十四章
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『ひ、土方さん・・・なんか今日は流石に疲れました・・・サボりとは言いませんが少し休んでいきませんか?』



暑さと疲労でクタクタの名無しさんを見て土方は苦笑すると近くの甘味屋に入る事をOKしてもらった



名無しさんはレモンスカッシュ
土方はアイスコーヒーを頼む




「いいのか?パフェとか食わねーで?」



『はい・・・なんか暑過ぎてスカっとしたものが欲しいんですよ・・・』



「ふーん?そういや朝飯もあんま食ってなかったな?」



『この暑いのに食欲あるのは隊士さんたちぐらいですよ、普通の人は食欲無くなる時期なんですから』



「そーなのか?」



『そうです、なので土方さんも減らして下さい・・・マヨを』



「なんでマヨなんだよ?食欲ない時こそマヨだろ?!」



『何を基準にそうなるんですか?食欲無い時はさっぱりしたものでしょう・・・』





チューっとレモンスカッシュを全部飲み干すと中に入っていたサクランボを拾い口に運んだ

店内はかなり涼しいと言うのに名無しさんの頬はまだほんのり桜色をしていた
ピトッと再び土方の手が名無しさんの額に置かれる




「・・・・やっぱ少し熱い気が済んだけど・・」



『そうですか?でもそんな気にする事じゃないですよ。』



「・・・・・・」



『さ、そろそろ行きましょうか?お昼ご飯食べ逃しちゃいますよ?』




そう言うと名無しさんは席を立った
土方が時計を見れば13時17分だった

確かに早く帰らなければ屯所の昼飯時間が終わってしまう

土方はレジに行きお金を払うと名無しさんの手を取り歩き出した




『あ、あの、今見回り中なので、手は離してもらった方が!?』


「あ?良いだろ別に、気にすんな」


『いや、気にしますって。市民の皆さんの目が痛いです!』


「痛がってろ」


『何でですかァ!?他の隊士に示しが付きませんよ!?』


「だァァァァ!!うっせー!!黙ってろ!!!」





ガウ!っと噛みつくように言えば、渋々名無しさんも口を閉ざした




・・・・やっぱ手も少し熱いな??



握られた手からの体温に敏感に反応する土方




帰ったら野田に頼んで薬を調合してもらうか・・・



そう考えながら2人仲良く(?)屯所へ帰って行った























何とかお昼ご飯の時間に間に合い食堂へ向かうと、そこには沖田と山崎がいた
山崎が少し半泣き状態なのは無視しておこう


お昼ご飯のしょうが焼き定食を受け取ると2人の隣に座った







「暑い中見回り御苦労さま〜」


「こんなに暑かったら日射病になっちまいまさァ。日射病で死ね土方」


「死ぬか!!!そこまで弱くねェ!!」


「暑苦しいんで喧嘩は止めてくださよ」


「「うるせ―山崎全身日焼けで死ね」」


「何その地味な死にかた」





暑いのによく喧嘩する体力ありますね〜・・



など思いながら名無しさんは真っ白いご飯に手を付けた








『・・・っぐ!!』






ご飯の湯気を吸いこんだ途端、込み上げてくる吐き気
名無しさんは思わず口に手をあて、猛スピードで厠に掛け込んでいった







残された3人はポカーンと口を開けて名無しさんが出て行ったドアを見る



「・・・やっぱ具合悪かったのか?」


「やっぱってなんでィ?」


「いや、なんか体温が少し高かったようだったんだが・・・」


「・・・微熱に・・・吐き気ですかィ・・」




そう言った沖田はニタリと笑った
その沖田の言葉に山崎も何を言いたいか分かって顔を真っ赤にさせ慌てふためく




「え!?え!?え?!マジっすか!?え?!え!?」


「なにキョドってんだ山崎」


「ふ、副長!!分からないんですか?!」


「は?何がだよ?」


「だから名無しさんの症状!!」


「風邪だろ?またクーラーの利きすぎた部屋にでもいたんだろ」


「馬鹿かァァァァァァ!!!アンタ馬鹿だろォォォォォォ!!!!」


「んだと!?ザキ!!テメー斬るぞォォ!!??」


「まぁまぁ、落ち着きなせィ土方さん」



珍しく沖田が止めに入る
それに目を丸くする土方



「これから人の親になるってーのに人斬りはよくねェですぜィ」



ニヤ―と笑う沖田に土方は怪訝そうな顔をする




「ここまで言って分かんねぇなんて、とんだ馬鹿だろィ」


「あ?!何がだよ?!」


「名無しさんは微熱もあって、吐き気もあるんですよねィ?」


「あぁ・・・そういえば、スカッとしたもんが食いたいなんて言ってたな」


「・・・・まだ分かんねぇんですかィ?」


「あ?微熱に吐き気?スカッとしたい???」


「「・・・・・・・・」」


「隊長ダメです、この人マジ馬鹿です」

「そうですねィ」



盛大に溜息を吐く2人に土方は青筋を立てる




「だから何だってゆーんだよ!?言いたい事があるならハッキリ言え!!!」




その言葉に沖田は少し真面目な顔を土方に向ける
山崎も同じように土方を見た






「名無しさんは


















妊娠してるんじゃねぇですかィ?」










その言葉に目を丸くする土方
口をポカンと開け、完全に止まってしまった









「・・・・・ふ、副長?」


「そのまま呼吸も止まっちまえ」







沖田の悪口も届いてないのか土方は動かない









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