紅天女
□第五章
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「今日から真選組副長補佐に任命されました名無しさん名無しさんです。宜しくお願いします」
{歓迎会}と称して開かれた宴会にて私は軽く自己紹介をした。
名無しさんと言う名字は適当に名乗りました。名字無しって可笑しいとの事だったので・・・・。
名無しさんの挨拶で会場はシンと静まりかえった。
(あれ?なんか挨拶まずかったかな?)
不安になって下げていた頭を上げると一斉に隊士たちが叫んだ。
「「「「「女ァァァァァァァァ!!!!!!!!」」」」」」
「しかも可愛い!!!!」
「おいくつですかァァ!!??」
「血液型は!!??」
「趣味は!!??」
「彼氏はいるんですか!!??」
目をギラつかせ鼻息荒く質問攻めにしてくる隊士に目を点にして固まっていたら、後ろから助け舟を出された。
「お前ら名無しさんちゃんに手出すなよ?言っとくが俺と総悟とトシ3人で掛かっても敵わないぐらい名無しさんちゃんは強いんだからな?」
近藤の一言に隊士全員が息を飲む。
どう見ても、華奢な体で細い手首、そんな彼女にあの3人が歯が立たないなんて・・・・。
隊士達が「自分じゃ相手にしてもらえない」という悲痛な表情を露わにした。
それから歓迎会なのか、宴会なのか、分からないぐらいのお祭り騒ぎが始まった。
隊士の殆どが酒に潰れ、近藤は全裸で踊ってる。総悟は山崎を捕まえて無理やり一升瓶を口に流し込んでいた。
そんな中名無しさんは出された料理にも酒にも一切手を付けずちょこんと座ってその光景を見ていた。
「飲まねェのか?」
一升瓶と徳利を二つ持って土方が名無しさんの隣に来た。
『お気遣いすみません。』
そう言ってやんわりと出された徳利を断った。
「なら、何か食え!お前起きてから何も食ってないだろ?」
飲んでいた酒を床に置き、料理を取りに行こうとするが、それもやんわり断られた。
『あまり食欲ありませんから、気に為さらないで下さい。』
「なんか食わねぇと倒れちまうぞ?」
名無しさんはその言葉には返事をせず大騒ぎしている隊士たちに目を向けた。
「どうした?」
『いえ、ただ・・・』
「ただ?」
『皆さんに私は受け入れて頂けたんでしょうか?』
その彼女の顔からは何の表情も掴めない。
ただ無表情に彼らに目を向けている。
「んなの当たり前だろ?」
土方の言葉に名無しさんは視線を戻す。
「受け入れてなきゃ、皆あんなに嬉しそうにゃ飲まねえよ。」
ポンポンと頭を撫でられ少し名無しさんの表情が柔らかくなる。
それを見た土方も少し口元を緩め新しい酒に口を付けた。
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