繊月の猫(完結)

□Chapter 7
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ここ3日aphroditeはcloseの看板がかかったまま営業をしていない

俺は店の前で、はぁと溜息を吐いて踵を返した






今日も会えなかった・・・
いや、違げー
そうじゃなくて
今日も飲めなかった。だ!!



そんな事を思いながら俺はフラフラと見廻りがてらファミレスへ入っていく
普段はサボるな!と他の隊士を怒鳴っている身分だが、もぅ3日もコーヒーを飲んで無い
流石に限界だ
もぅどんなんでもいいからコーヒーが飲みてぇ!



俺はあの店の存在を知ってからどんなに忙しくても時間を作って店に行っていた




もちろんコーヒーを飲むためだ!
(ここ大事!)



なのにここ3日、まったく店が開く気配がねェ
あの店は2階建てになってて2階部分が彼女の住居スペースになってるようだが、夜もそこに明りがつく事がなかった


あ?
ストーカーじゃねェぞ!?
夜勤の見廻りの帰りにチラッと見ただけだ!!



そんな訳で俺は3日もコーヒーを口にしてねェ




俺はファミレスで出されたコーヒーに口を付ける








「・・・・・・・・・・・・・」







不味い







あのコーヒーを飲むまでは何とも思ってなかったファミレスのコーヒーだが・・
何ともまぁ・・コクも香りも飛んじまってただの苦い水だ



俺は一口だけそのコーヒーを飲んで端に寄せた



やっぱあそこのコーヒーが飲みてぇ
麻裕子が俺の前で煎って、挽いて、淹れてくれるコーヒーが飲みてぇ



口直しに吸った煙草すらなんだかほろ苦く感じた







いつの間にか俺の生活の中に溶け込む様に入ってきた麻裕子
彼女の出す、のんびりとした雰囲気に俺をはじめとする真選組隊士ら一同すっかり骨抜きにされちまった見てぇだ


いやいや、俺が骨抜きにされたのはコーヒーの味だ!アイツに骨抜きな訳じゃねェ!!




・・・・・・だけど

何時も俺を(俺だけじゃねェけど)気遣って、くれる彼女に好意を寄せているのは確かで・・





夜の営業中に行けば、寝る前だからとカモミールティーを入れてくれたり、一段と冷え込む日はジンジャーティーを入れてくれたり、徹夜続きの時は濃いめのコーヒーを淹れてくれたり・・
そんな行為が嬉しくて、つい顔が緩んじまう


他の客がいねェ時は隣に座らせて一緒に茶するのが楽しくて


アイツが笑うと俺の心も安らいで


ずっとそこに座っててぇと思っちまう







やべぇな俺・・・







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