繊月の猫(完結)
□Chapter 5
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耳に嵌めたイヤホンから雑音に紛れて男たちの声が聞こえる
黒猫はそれを聞き逃さない様に更にきつくイヤホンを耳に押し込んだ
"歌舞伎町にある旅籠屋菊名に集まっているようです"
"人数は?"
"大体50名ほどかと"
"ならは一番隊と五番隊だけでいい、今夜6時に突入だ"
"御意!"
そこまで聞いて黒猫はポンとイヤポンを耳から引っこ抜いた
『旅籠屋菊名・・・か・・・』
黒猫は盗聴器の受信機の電源を切りながら隣りに寝ていた黒豹の背中を撫でた
『ティシフォネ、お前のしかけてきた盗聴器、良い塩梅だ』
そう言いながら黒豹の顎をガシガシと掻いてやる
するとティシフォネは鋭い眼光を細めながら気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らした
『真選組は6時に突入か・・ならば俺ははその少し前、5時30頃に行こうか?んでまたあの犬の間抜けな吠え面でも拝もう!』
くくくっと喉を鳴らしながら笑うとティシフォネもそれに賛同するかのようにガゥっと小さく一鳴きした
黒猫はその真っ黒なマントを体に巻き付ける
そしてしゅっと剣を抜くと、その細い刃に写る自分に問いかけた
『あれがアフロディテなら、この俺は軍神アレスと言ったとこかな?短気で乱暴者のアレス。どうだろう?ティシフォネ?俺はアレスだと思うか?』
その問いにプイっとティシフォネは顔を逸らした
『なんだよ?違うってーのかよ?』
ムぅと頬を膨らまして剣を鞘にしまうと黒猫はティシフォネの背に跨った
そして優しくその背中を撫でながら小さく呟いた
『殺人の復讐神、ティシフォネ。そんな名をつけてすまないな』
ピクンと大きな黒い耳が動く
まるで気にすんなよ、と言うように小さく唸ると黒豹は黒猫を背中に乗せてかけ出した
目的地は
旅籠屋菊名
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