繊月の猫(完結)

□Chapter 1
1ページ/5ページ





白猫が歩く

淡い月に照らされて、その肢体は美しく艶やかに光り輝いて見えた



男がその猫に近づく
稀に見る美人な猫にそっと手を伸ばす
猫はその手を嫌がる訳でもなく
大人しくその男に頭を撫でられた




「こんなとこに居たら危ねェぞ?」




その言葉に白猫はパタパタと耳を動かしながら「にゃあ」と一鳴きだけした
そしてその意味を理解したのか、足早に暗闇に溶け込んで行った







「土方さん、どうしたんですかィ?」


栗色のサラサラヘアーを靡かせながらこちらに歩いてくる男
真選組一番隊隊長沖田総悟




「いや、別嬪さんがいてな」



そう言いながら煙草をふかす黒髪の男
真選組副長土方十四郎




「おっ?これから決戦だって言うのに女か?!トシめ〜!!モテるからってダメだぞ!めっ!!」


ガタイの良い体で人差し指を前に突き出し「めっ!」と言うしゃべるゴリラ
真選組局長近藤勲




「局長そのキャラ止めて下さい、見てて怖いですから」



いつの間にか彼らの横に立っていた存在感皆無に等しい男
真選組監察方山崎退








暗闇に紛れ姿を隠す様に息を潜める4人
見つめる先は200m程先にある廃墟





「突入準備はまだ整わねェのか?」


「そろそろだと思うんですが・・・」


「ったく、もたもたして、また黒猫に先越されたらどうすんでィ」


「まぁまぁ総悟、そう焦るな」




近藤が沖田を宥めていると無線に連絡が入った

しかし、それは待っていた連絡では無く
4人が危惧していたものだった







『すいません!先越されました!!黒猫です!今局長たちの方面に逃げて行きました!!!』






無線から聞こえる声に土方らは刀に手をかけ、周りを見渡した





黒猫がでた
毎度毎度俺らよりも先越しやがって・・






勢い良く抜刀すると、その頭上を何かが飛んで行った




「いたぞ!!黒猫だ!!!」



そう叫ぶ近藤
今しがた彼らの頭上を高々と飛んで行った人物それこそが黒猫だった



真っ黒いマントとフードですっぽりと体を包み込み、風の様にその場を駆け抜ける
その黒猫と呼ばれる人間の横には大きな黒豹

黒猫はその黒豹の背中に乗ると全速力でその場を後にした




「くそっ・・・逃げ足早ぇ・・・」





獣の足には追いつけず、土方らは苦々しく砂を蹴りあげた





「・・・・黒猫か・・・」




そう呟く土方を繊月が冷たく見降ろしていた







次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ