Love Hunter(完結)
□其の十四
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「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」
壊れるんじゃないかと言うほど思いっきり木戸をあけ店内へと入っていくと、椅子に座って驚いた風に俺を見るまゆこと、冷静に俺を見ているたまさんの姿があった。
『山崎さん・・どうしてここに・・・』
唖然として見てくるまゆこに俺はスライディング土下座をすると何度も何度も床に額をこすり付けた。
「待って!違うんだ!俺は確かにストーカーをしていました!!していましたが局長みたいなストーカーじゃなくて!!もっと大人しくっていうか、本当に陰から見てるだけのストーカーだったの!!」
『・・・・・・・・・』
「電柱の陰から見たり・・隣のアパートの窓から盗み見したり・・けどあくまで昔だから!!たまさんから何を聞いたかは知らないけど、昔だから!!それだけは信じて!!!」
「山崎さん、いきなり何をおっしゃってるんですか?まゆこさんが軽蔑的な眼差しに変わりましたよ?」
「え、えええぇぇぇぇ!!??な、なんで!?」
『・・・なんで?つーかよくこの状況でなんでって言えますよね?馬鹿ですか?馬鹿ですよね?』
「だ、だって!!本当にストーカーって言っても俺は誰にも迷惑はかけて・・・ないと思います!」
「そうですか、確か私のデータに最後嘔吐物まみれにされた、とありましたが・・・データのバグでしょうか?」
「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!ご迷惑お掛けしてます!!とんだ迷惑をぶっかけました!!」
椅子に座っているまゆこ、なので土下座をしている俺から見ると、なんか蔑んで見られているような気がしないでもない。
気のせいだと思いたいが、あの目は本気な気がしてならない。
たまさんもたまさんで他人ごとのようにシラッとしている。
その状況に嫌な汗が一気に噴き出しそうだ。つーか体中の水分という水分が吹き出そうだ。
なので俺はさらに弁解しようと空気を大量に肺に送り込んだ。
『・・・つーか、ストーカーなのはわかってますよ。ただ・・・何が大人しいストーカーですか、何が陰から見てるだけですか、どの口がそれを言ってるんですか』
肺いっぱいに吸い込んだ空気が「へ?」という間抜けな声と同時に大量に放出された。
それにまゆこはこれでもか、というほど眉間に皺を寄せて俺を見下してきた。
あ、その顔も可愛いな・・・・なんて思ってる自分はMっ気があるんだろうι
『何にやついてるんですか、現状わかってます?』
「え、あ、ご、ごめん・・・」
『私、今、思いっきり呆れてるんですよ?山崎さんの発言に』
「え?そ、そうなの?やっぱストーカーって知ってショックだった?」
『だから山崎さんがストーカーだってゆーのは分かってたって言ってるじゃないですか!!!そもそも私にもストーカー行為を働いといて何んな発言してるんですかぁ!!??』
「え、えぇ!!??まゆこにストーカーって・・・し、してないよ!!絶対にしてないって!!!」
ワタワタと顔の前で手を振る俺に、もう呆れて声も出ない、という風にまゆこが額に手を当てて盛大なため息をついた。
あ、あれ?お、可笑しいなι屯所では潤んだ瞳で俺を見てくれたっていうのに、今はなんか物凄く目が据わってる・・・・。
違う意味でドキドキする俺にまゆこはもう一度だけため息をつくと、「忙しいところにお邪魔してすいませんでした」とたまさんに軽く頭を下げると俺の首根っこをつかんだ。
そして、そのままズルズル引きずられるようにして店の外へと連れ出された俺。
「あ・・・あの・・・ι」
『・・・なんですか、変態山崎さん』
「やっぱ、怒ってるよね?」
『なんでそう思うんですか?』
「だって、態度が明らかに・・・けど、俺本当に今はストーカーなんかしてないし、ましてタマさんに未練があるわけでもないし、まゆこだけだから、まゆこだけが好きで、まゆこだけの傍にいたいから・・」
『・・・・・・・』
「そんでまゆことだけチューしたいし、もちろんその時はちゃんとベロも入れてね?俺まゆこの唾液だったらごくごく飲めちゃうと思うんだ、もちろん唾液だけじゃなくて愛液も全部、んで当たり前だけど俺の○○○を挿入するのもまゆこがいい、出し入れする度に甘い声をあげちゃうまゆこの声も表情も何もかも俺のも・・・」
『お前は少し黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええ!!!!!!!』
ズルズルと首根っこを摑まれ引きずられていた俺の左顎に思いっきり回し蹴りが入りました。
一瞬意識が吹っ飛びそうになりました。
副長並みに破壊力のあるキックでした。
「っっっっ!!!???な、なにすんの!!?」
『何すんのは私のセリフでしょォォォォォォ!!!?此処外!!町のど真ん中!!そんな所で何言いだすんですかぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
「どこだって関係ない!!!!!!」
左顎絶対腫れてる。
大声出すとかなり痛い、けど、俺は腹の底から声を絞り出した。
それに驚いたようにまゆこが俺を見る。
「俺は場所や時間や周りに左右されて君を好きなわけじゃない!!何時だってどんな時だって、俺は君の事しか眼中にない!!」
『・・・・・っ、』
「何時だって好きだって言いたいし、何処でもエッチしたい!!!!」
『・・だから・・・・最後の一言が余計なんだよこのボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!』
「ぶべらっ!!!!!」
目には目を、歯には歯を、右の頬を殴られたら左の頬を差し出しなさい。
よくそういうが、今俺は差し出してなんかいない、なのにまゆこは俺の右顎にスクリューパンチを決めると、顔を真っ赤にしてずんずんと歩いて行ってしまった。
「っ、まゆこっ!!!!」
『煩い煩い煩い!!!もう山崎さんとお話しなんかしたくない!!絶対どうせまた変なこというんでしょ!?』
「言わない!言わないから待って!!」
『いや!!言います!!絶対言います!!自分勝手に気持ち押し付けて、有無を言わさず私があなたの事を好きみたいに扱うんでしょ!?』
「だ、だって、俺はまゆこのこと好きなんだもん!まゆこだって嫌だ嫌だっていながら俺のこと好きなんでしょ!?そうなんでしょ?!ねぇまゆこ!!そうなんでしょ!!?」
俺の声が歌舞伎町の大通りに木霊する、町ゆく人らは何事か、と俺らをちらちらとみている。
そのせいか、まゆこの後ろ姿からちらりと見えた耳は真っ赤になっているようにも思えた。
「ねぇ、まゆこ!!違うの?!」
『・・・・・・っ、好きですっ!!!!!!!』
「え?」
町の雑踏の中、聞こえてきた怒ったような彼女の声、けれども俺の耳にはその声はとてもクリアに聞こえた。
『好きですよ!!なんで、どうしてって自分でもわかんないですよ!!けど、気づいたら好きになってたんですよ!!もう毎日毎日呪文みたいに好きだ好きだなんて言われてたから・・・だから、きっと・・もぅっ!!!山崎さんは魔法使いか何かなんですか?!』
ちらちら見える耳は真っ赤、ついでに項も真っ赤だ。
きっと後ろ姿で今は見えない顔は更に赤いんだろう、
俺は息をするのも忘れて立ち上がると、その顔を見たくて見たくて、痛む両頬を無視して走り出していた。
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