・2 (完結)

□最終章
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夕刻、時間ギリギリで飛び込んだ産婦人科に土方の声が響いた










「うおォォォォォォォォ!!!!!!」










「ちょっと、ご主人落ち着いて下さい!!」




「Σ!!ご主人っ!!俺かっ!!」



医者が興奮する土方を抑え込む
名無しさんに横になりながら、そんな土方に苦笑を洩らした




「いいですか?これが赤ちゃんですよ?」



医者が名無しさんの腹にエコーをあてながら画面に映し出された、まだ人間の形もしてない影を指差した

土方は少し潤んだ瞳でソレを見つめる




「少し激しい運動をしたとの事ですが、問題はなさそうですね」



「はぁ・・・・良かった・・・」



カタンと椅子に座る土方
でもその目は今だ画面に釘付けだ



「・・・俺らの子供か・・・」




ぼそりと言った言葉
その顔は物凄くだらしなく緩んでいる






「今は9週目と言ったところですかね?まだまだツワリも続いてると思いますけど、あまり無理はせず食べれる物を食べて下さいね?」



「Σ!!ツワリ!?」



『分かりました』



「お前ツワリなんてあったのか!?」



『そりゃありまくりですよι』



「そっか・・・だから最近飯あんま食ってなかったのか」



「妊婦さんは体も心も不安定になりやすいですからご主人がしっかり支えてあげて下さいね?」





その言葉に土方は仕事の時の様に真面目な顔ををして「はい」と医者に返事をした
その表情を名無しさんは愛おしそうに眺め少し頬を染めていた




「・・・・・それとご主人・・・凄い怪我ですがι少し治療していきますか?」




ハッとして自分の格好を見れば、思い切り血だらけだった事に気がついた
土方は困ったように笑うと「大丈夫です」と言って肩の傷を押さえた

























屯所に帰ると嫌がる土方を名無しさんは無理やり押さえつけた





「大丈夫だって言ってんだろ!?離せ!!」




『ダメですって!!言う事聞いて下さい!!』




「良いから俺から降りろ!!」




『だァー!!!このわからず屋!!!』





土方の腹の上に乗っかり名無しさんがナイフ片手に暴れていた




「お前妊婦が無理すんじゃねぇ!!」



『煩いです!その傷がもし悪化して死んじゃったらどうするんですか!?いいから血を飲んで下さい!!』




どうやら名無しさんは血を飲まそうと必死の様だ
土方は名無しさんを無理やり退かす訳にもいかず下でうろたえている
その隙に名無しさんはピッと人差し指を斬るとその指を土方の口にねじ込んだ



「うぐっ!!」



ゴクンと流れてくる血を飲めば、体がざわつき出す
この感覚は3度目だと言うのになかなかなれないもんだな・・・と土方は思いながら苦痛に顔を歪めた


そんな彼の頬を名無しさんは優しく撫でながら





『土方さん・・・ごめんなさい、私のせいで・・』




苦痛の中目を開ければ、悲しそうに自分を見つめる目とぶつかった
土方は震える手を伸ばして名無しさんの頬をつねってやった





「ばーか・・・なんて顔・・してんだよ?野田も言ってたろ?俺らはお前のそんな顔を見たかった訳じゃねぇって・・・だから・・・笑え?な?名無しさん」




苦しそうに笑う土方に、名無しさんのへにゃっと笑った



『土方さん・・・』



「あ?・・・」



『ありがとうございました!!』




「・・・・・・あぁ」





寝っ転がっている土方に名無しさんは覆いかぶさるように抱きついた
土方は優しくその体に手を回す
そして耳元で囁いた






「あの時の言葉・・・届いてたか?」




『あの時の?』




「ならもう一回言わせろ」




名無しさんの髪を耳にかけるとソコに唇を寄せた




















「俺と結婚して下さい」



















ポロっと零れる涙

届いてましたよ?
私が闇にとらわれてる時も言ってくれましたよね?



ポロポロと止まる事のない涙は土方の頬も濡らす




「おい、泣いてばっかいるんじゃねぇ・・・返事聞かせろコラ」




土方の顔をチラッと見ると頬は紅色に染まり耳も若干赤くなっていた
名無しさんは服の袖でゴシゴシと涙を拭くととびきりの笑顔を土方に向けた









『土方さんの奥さんになりたいです!』














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