・2 (完結)
□第四十一章
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梅雨入りを迎えた空は5日連続で雨を降らせていた
こんな日はサボりに限りまさァ
俺は机の引き出しからアイマスクとせんべいを取り出すと居間に向かった
今日の目的は昼のワイドショーを見てそのまま昼寝でィ
見回りがあったような無かったような気がするって事は無いんだな
なんて考えながら居間の襖を開けると先客が居やがった
「名無しさんじゃねーですかィ?珍しいですねィ?居間に居るなんざ」
そこには座布団を何枚も敷いてその上に寝転がる名無しさんの姿
『あ、総悟・・・なんかジメジメしちゃって調子が出ないんですよ』
「あーわかりやすねー、こうも鬱陶しいと気が滅入っちまいまさァ」
『本当ですよ、頭にカビが生えそうです』
「俺なんか股にキノコはえました」
『・・・・・何の話ですか?』
「え?下ネタ?」
『いつどこでそんな話に変わったんですか?!』
「まぁまぁ、ダラダラ一緒にやりやしょう。煎餅たべますかィ?」
『頂きます〜』
俺も名無しさんと同じように座布団を何枚も持ってくるとその上に寝転んだ
そして煎餅をつまみながらTVのワイドショーに目をやった
"ごらんください!連日の豪雨で川が氾濫しております"
『うわー凄いですねー』
「本当ですねィ、土方を投げ入れたいですねィ」
『死体上がらなそうなので止めて下さい』
バリバリと煎餅を頬張る
"あ!見て下さい!何かが濁流にのみ込まれています!!あれは・・・ゴリラでしょうか!?ゴリラが濁流にのみ込まれています!!動物園から逃げ出して来たのでしょうか!?"
「『・・・・・・・・・・・』」
『・・・・局長ぅぅぅぅぅぅう!!!???』
TVの画面を良く見れば川に流されているのはゴリラではなく、近藤だった
名無しさんは慌てて携帯を取り出すと山崎へかける
『あ!退くんですか?!局長がゴリラで川で流されてます!!!今TVのニュースで取り上げられてるんですよ!!真選組の面汚しになっちゃいますから早く回収お願いしますぅぅ!!!』
そう言うと携帯をしまって再びTV画面に目を向けた
『・・・・どんどん流されていきますけど・・局長大丈夫ですかね?』
「どうですかねィ?まぁゴリラは水浴び好きな筈ですから大丈夫だろィ」
『あ。そうなんですか、安心しました』
何が大丈夫で
何が安心させたのかは不明だが
2人は再び煎餅を食べ始めた
『それにしても鬱陶しい雨ですね・・・何時になったら太陽が現れるんだか・・今日は見回りがあるのに・・・』
窓の外を見るとまだザーザー降りで雨が降っている
「そうなんですかィ、俺は今日見回りねぇでさァ」
『何言っちゃってるんですか?今日のペアは私と総悟ですよ。何サボろうとしてるんですか?私運転できないんですから総悟が運転しないと見回り行けませんよ』
「ッチ。名無しさんとでしたかィ。歩きでいきなせィ、健康のために」
『こんな雨の日に歩けってゆーんですか?健康のためって、雨に濡れて風邪をひくのが落ちですよ、サド総悟』
「風邪ひかね―様に気合い入れるため鼻フックでもしてやりやしょうか?」
『いえいえ、全く意味が分かりませんサディスティック星の言葉じゃなく日本語でお願いします』
「鼻フックやらせろよ」
『簡潔に言っただけじゃないですかァァ!!』
「だってよーこんなジメジメした日にゃー鼻フックの1つや2つしねーとやってらんねぇでさァ」
『その基準が分かりませんが、やってられないのは分かります』
「なら、やらせなせィ」
『全力で死んで下さい沖田隊長』
「名無しさんも言うようになりやしたねィ」
『沖田先輩の教育の賜物ですよ』
今にも戦闘態勢に入りそうな会話なのに一行に2人とも動こうとしないのはこのジメジメな空気のせいだろうか?
動くと言ったら煎餅を取る手と食べる口だけ
名無しさんは、はァとため息を吐くと窓の外を睨んだ
『・・・雨って嫌いなんですよ・・・』
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