Sword of time-space・時空の刀(完結)

□第34話
2ページ/8ページ





これからの事を話し終え、会議も終わろうとしたところで麻裕子が電話から戻ってきた



その表情は心なしか険しい



あっちでも何かあったのか?




そう思いながら麻裕子を見ていると、アイツは自分の席には戻らず山崎の方に進み寄り、何かを耳元で言っている
その声はこちらまで聞こえなかったが、それを聞いているであろう山崎の表情も一変して険しくなっていく


そして話し終えると山崎が俺の方を見る



何かあった



俺はコクンと頷くと、一旦会議を終了し全員を持ち場に戻した




全員が出て行った会議室で
いや、正確には近藤さんと、総悟と山崎と麻裕子を残した会議室で麻裕子が先程の電話の内容を話しだした




『さっきの電話、松平のオッサンからだったんだけど、昨日の昼ごろから中原が姿を消したみたいです』


「中原が?」


『はい、ちょうど三日前にもオッサンから電話があって中原の様子が可笑しいと言われていたんですけど・・・』



「・・・・・昨日の昼頃か・・俺らが黒づくめに襲われたのと同じ時刻・・」



「中原さんも黒づくめに襲われたと考えるのが正しいでしょうか?」


「でもあの中原君も暗殺部隊の最高責任者だろ?って事は結構な腕じゃないのか?」


「そうですねィ、アイツと剣を交えたこたァねェですが・・・普段のほほんとしてる割に、あの殺気はタダ者じゃねェですねィ」






分かんねェ
情報が少なすぎる
一体俺達のしらねェ水面下で何が起きてんだ?



ガシガシと頭を掻きながら俺は最後の一本になった煙草に火を付けた






















「麻裕子ちゃん、昨日大丈夫だった?」



腰を押さえて歩いていると後ろから退に声をかけられた

どういう意味の大丈夫?

と眉を寄せると
退は苦笑しながら「激しかったみたいだね」と言ってきた
その事に全てお見通しなんだと、ボッと顔が熱くなる




「今日の見廻り変わろうか?」




と気を使ってくれる退だけど、そんな理由で腰が痛くて仕事出来ません、なんて恥ずかしいから
大丈夫とだけ言うと退は可笑しそうに笑った


だけどその顔はすぐに変わった
悲しそうに切なそうに私を見る





「でもさ、俺・・・副長の気持ちも分からんでもないよ?」



その言葉に昨日刀を使おうとした事を言ってるんだな、と察して思わず口を閉じた




「俺も麻裕子ちゃんにはあの刀抜いてほしくない。酷い事言うようだけど、元の世界に戻ってほしくない、麻裕子ちゃんは此処に必要な人間なんだから」



淡々とそう言う退
でも目は真剣で何時もの優しそうな彼の面影はない

それが不謹慎かもしれないけど嬉しくて退にニコリと微笑み返す




『もぅ使わないよ?シローにも泣かれちゃったしね!』


「え?!泣いたってあの副長が!?泣いたの!?」


『そうそう、麻裕子〜!行かないでくれ〜!何でもするから〜!ってマジ大泣き』




「・・・・ほォ〜?誰がそんなに大泣きしたって?」



「『・・・・・げっ、鬼が来た』」



「誰が鬼だァァァァァァ!!麻裕子!!!!」





俺の後ろに隠れる麻裕子ちゃん
あぁ、何で俺の後ろ?
そんな事したらこの人が・・・ぎゃァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!



・・・・なんで本当に俺ばっか・・・

殴られて蹴られて庭に放り出されて
踏んだり蹴ったり

でも、意外な事を聞いた
副長が泣くなんて
そんなにもあの鬼を手なずけてしまった麻裕子ちゃんを少し尊敬
どうやればそんなに手なずけられるのか教えてほしいぐらいだ

でも、そっか、副長も泣くんだ
アレでも人の子だったんだ(アレ?ちょっと酷い言い方だった?)
冷静沈着な鬼のような人の涙かァ

そんなにも彼女の事が大切で大好きで愛してて離したくなくて必死なんだろうな



だから俺は思うんだ
麻裕子ちゃんには悪いけど
親を、友達を捨てろと言うみたいで悪いけど
絶対元の世界なんかに返さない
もし帰ってしまったら、きっと副長が壊れちゃう
麻裕子ちゃんと言うストッパーが無くなったあの人は面倒臭い事この上ないだろう
麻裕子ちゃんが消えて大泣きするあの人の姿なんて怖くて見たくないし



俺は隊服についた泥を払い落しながらグンと大きく伸びをした





「真選組のお姫様が刀を抜かない様にしっかり守りますか!」




俺の決意は誰の耳に届く事も無く、自分の耳に木霊した





次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ