Sword of time-space・時空の刀(完結)

□第32話
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沢山の人と天人が行きかう大通り
そこの道の端っこに設置されているベンチに銀時と腰かけた

チーバットの先っぽを噛みちぎり道端にペッと捨てる


カチコチに凍っていたチューバットは良い具合に溶けかけていた




『やっぱチューバットはグレープに限るね』


「お〜そ〜だな〜」


『あ〜そう言えばこの前エロ杉にあったよ』


「マジか」


『マジ、無駄に色気振りまいてた』


「・・・なんか言ってたか?」


『ん〜?一緒に来いって』


「・・・・お前アイツのお気に入りだっかからな」


『は?そうなの?』




確かに仲は良かったけど"お気に入り"と言われるほどだっただろうか?
思わずチューバットを握る手が強くなって口の中に大量のチューバットが流れ込んだ



「他に何もされなかったか?」


『別に特には・・・でも最後車ごと川に落ちた』


「はぁァァァァ!?何してんのォォォ?!」


『いや〜あれはスペクタクルだったよ』


「いやスペクタクルで纏めるなよιよく無事だったな?お前泳げねぇじゃん?」




ピクっと眉が動く
そして思い出すかのように遠い目をすると刺々しい言葉を放った




『そーだよね〜?泳げないって知ってどっかの誰かさん昔私を川に突き落としてくれたよね〜?』




ねェ?と銀時に黒笑みを向けるとヒクっと銀時の顔が引きつった

あれ?覚えてたの?そんなことまで思い出しちゃったの?と言いながらダラダラと汗を流す銀時



『全部ちゃんと思い出してるっつーの、この縮れ毛』




ズコンと銀時の頭にチョップを食らわすと空になったチューバットをゴミ箱へ投げた
そして懐から煙草を取り出すと口直しとしてた煙を吸う

甘い物の後の煙草は格別美味い

ベンチの背もたれに肘を掛け、空を仰ぎ見るように紫煙を吐きだす



その姿を視界に入れながら銀時はベンチに立てかけられている刀"時渡"に目を向けた



先日やっと修理が終わって手元に戻ってきたのだ





「なァ・・・麻裕子」



空を仰ぎ見ながら「ん?」と言葉だけ返す



「お前さ・・・またその内、元の世界?ってとこに帰るのか?」



銀時の言葉に麻裕子は煙を吐くのを止めた




『・・・・なんで?』


「・・・いや、なんとなく」




そう言う銀時の声が少し寂しそうに聞こえたのは自分の願望だろうか?
土方以外にも自分を此処で必要としてくれる人間がいてくれる
そう思っても良いのだろうか?




麻裕子は少し考えるようにしてから、また煙草に口を付けた




『こっちに居たいと思ってる。・・・私さ・・・』



細く吐かれた紫煙が空気に溶けて行く



『この世界での記憶も思い出もある、家族じゃないけど家族の様に接してくれる仲間も入る、大切な友達も戦友もいる・・・なにより守りたい人がいるんだ』



ユラユラと揺れる煙を銀時は見る
その目は何時もの死んだ目とは違く見えた




『どっちが本当の世界かなんか関係ない、どっちも私の大切な世界だ』




そう言う彼女の横顔がとても綺麗で、銀時は思わず息を飲んだ

そしてふっと笑うとチューバットをゴミ箱に投げた




「お前がこっちにいてくれたら俺も嬉しいわ、けどよ・・・気を付けろよ?」



チラリと"時渡"を見る



「その刀を持って真選組に居るって事は、元の世界に帰っちまう確立が高くなるだろ」



そう言われ麻裕子も刀を見る

銀時の言おうとしている事は分かる
銀時は自分が元の世界に帰る時、それを目撃したただ一人の人間なんだ



麻裕子は不敵に笑うとカシャンと刀を腰に差した




『そんなヘマはしないよ?』


「なら良いけどよ・・・」




万が一、麻裕子が元の世界に帰っちまった時は・・・きっと土方は壊れちまうんだろうな・・・





そんな事を考えながら
銀時も麻裕子同様に空を仰ぎ見た




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