Sword of time-space・時空の刀(完結)

□第31話
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自分で意識する前に目が彼女を追う
刀を振る姿が綺麗だと思った
俺に向ける笑顔が可愛いと思った

俺があいつを見つめていれば、アイツも俺を見つめて、だから俺はその瞳に優しく笑いかけるんだ



どうか俺と同じ気持ちでありますようにって






俺の気持ちがドンドン膨らんで行っている時、総悟からミツバの状態が思わしくないと聞いた

もとから体の弱かったミツバ

何時倒れても可笑しくないと医者に言われたそうだ
なのにアイツは無理して毎日道場へ来ては飯を作ったりなんだりしてやがる


ミツバは俺らの家族同然だ
心配しねぇ訳がねェ

でも総悟の希望で麻裕子にはその事を言わないでほしいと言われた
ミツバを慕っている麻裕子の事だ
ショックを受けるに決まってる

俺は総悟の意見に頷くと麻裕子に黙ってミツバを見守っていた







そんな中だった、麻裕子が突然いなくなったのは




訳が分からなかった

いきなりアイツは消えたんだ



此処に来た時の服と刀だけが無くなっていた


俺らは近くを手当たり次第捜した
走り回って走り回って
奉行所にも捜索願を出した
そこで知ったのは
そんな名前の人物はこの世にはいないと言う事だった



なんでだよ?
お前はちゃんと存在してたじゃねェか
俺らの傍で何時も笑ってたじゃねェか
お前がこの世にはいない?
どういう事なんだよ?
訳わかんねェよ・・・




愕然としながら俺は奉行所から帰った
そしてその日
ミツバが倒れた



病院に救急搬送されて機械や管が沢山取り付けられていく


その最中
ミツバは何度もうわごとのように


「ごめんなさい、麻裕子ちゃんごめんなさい」



と言っていた
その事が気になって、回復したミツバを問い詰めたが明確な事は教えてくれなかった


ただ


「麻裕子ちゃんにきっとバレちゃったの・・・・だから、だからきっと・・・」



そう涙を流して泣くだけだった
流石にそれ以上聞く事も出来なくて俺はギリっと奥歯を噛みしめ病室を後にしたんだ




そして数週間後

俺は、俺達は麻裕子という存在を忘れる





麻裕子がいない日常が辛くて悲しくてあんなに嘆いていたのに
記憶から綺麗に消え、俺は何も感じることなく元の生活に戻っていた
なんの違和感もなく、寂しいと感じる事も無く
俺達の世界から城戸麻裕子が消えた








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