Sword of time-space・時空の刀(完結)

□第31話
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俺の心情を知ってか知らずか、ナイスなタイミングで山崎が部屋に入ってきた





「副長、冷えピタと薬買ってきました。あ、ちなみに麻裕子ちゃんが好きなサクランボのゼリーも買って来たんで後で食べさせてあげて・・・ってふ、副長?ど、どうしたんですか?顔が・・・」



顔が?

顔がなんだってーんだよ?

つーか何でお前が麻裕子の好きな種類のゼリー知ってんだよ?

麻裕子の好きな。だァ!?

麻裕子の好きな奴はこの俺だァァァァァァ!!!




「死ねコラ山崎ィィィィィィィ!!!!」


「えええぇぇぇぇ!!??なんでっ!?・・・ぶほォっ!!!!」





俺に回し蹴りを食らわされた山崎は庭まで吹っ飛んで行った

ケッ
ざまーみやがれってんだ!





俺は山崎が置いていった袋から冷えピタを取り出すとフィルムを剥がしてそっと額に貼ってやった

いきなりの冷たさに驚いたんだろう、麻裕子は一瞬だけピクっと体を震わせた


起しちまったか?と顔を覗きこんだがどうやら起きる心配はなさそうだ


ふぅと溜息を吐いて残りの冷えピタを箱の中にしまった
そしてそっと麻裕子の寝顔を覗いた





不謹慎かもしれねェが可愛い
熱に魘されてる顔も可愛い
男は妄想する生き物だ
なんつーか、魘されてる顔が色っぽくて、
事情の最中みたいな感じで・・
いかんいかんいかん。
俺は盛りの付いた雄なんかじゃねェ
良い大人なんだよ
そんな目で見るな十四郎、お前はやれば出来る子だ!!




フルフルと顔を振って邪念を振り払う

そして何回か深呼吸を繰り返して再び麻裕子に視線を落とした






あぁ・・・昔もこんなことあったよな・・







俺は麻裕子を見ながら少し昔の事を思い出した





そうコイツとの出会いは、ミツバが持って来たもんだった





道場で稽古をしていると、ミツバが大声を張り上げて助けを求めてきたんだ


「女の子が血だらけで倒れてる」って



俺らは急いでその場所に行くと、珍しい格好をしたお前が肩から大量に血を流して倒れてたんだっけ

その血の気の引いた顔を見て、不謹慎にも俺は綺麗だと思っちまったんだ






「どうだ?肩の具合は?」


『あ、十四郎さん。お陰さまで大分良くなりました、もう動かしても平気です』


「そうか、ところでよ?お前刀持って倒れてたけどよ・・・・剣術やんのか?」



『え?・・・えぇ、まぁ少しだけ、上手くは無いけど』


「なら、怪我が治ったら付き合え、ここは道場だからな行くとこもねェって言ってたし、ここの門下生にでもなりゃいいだろ?近藤さんもそう言ってたしよ」


『え、でも・・・私・・・』


「此処にいろよ?な?」


『・・・は・・い』





今考えれば無理やりだったと思う
でも俺はなんでかお前と離れるのが嫌だったんだ
一緒に居てぇと思ったんだ
これが恋心とは知らずに
ただのコイツに対しての興味だと思ってた





それから数週間で麻裕子の傷は塞がり
俺らと一緒に稽古をする事になった
もちろん門下生として
見事俺のたくらみは通ったんだ




「オイ、もぅへばったのか?」



『はぁ・・はぁ・・病み上がりで体力落ちてんだよ、少しぐらい手加減してくれてもいいんじゃない?』



「お前なァ・・結構良い筋持ってんだぞ?なのに中途半端な稽古しかしなかったらますます腕が鈍るだろ?」



『・・・ぬ〜・・』



「分かったらホラ立て、打ちこみやんぞ!?」



『うぅ・・・・あ!ミツバ!!』



「麻裕子ちゃん調子はどう?傷痛まない?」



『うん!大丈夫!』



「オイミツバ、今は稽古中だ、入ってくんな」



「あ、ごめんなさい?じゃぁ私外で待ってるから後で一緒に買い物にいきましょうね?」



『了解!ごめんね?じゃぁ待っててね!』






正直、この時ミツバに悪い事をしたと思う
別に入って来ても問題はねェのに
麻裕子と2人きりになりたいが為にミツバを追いだした
麻裕子はミツバを実の姉の様に、親友の様に慕っている
それは俺が入る隙のないぐらいにミツバにべったりだ
でも
今は俺の時間
俺と麻裕子だけの時間
誰にも邪魔はされたくねぇ

餓鬼だった

新しい玩具を一人で独占したくて我儘を言ってるような餓鬼だった

その玩具に対する気持ちも良く分かんねェで
ただ自分の物だけにしたがって

でも何時しかその気持ちも理解した






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