・2 (完結)

□第三十九章
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現場へ向かうパトカーの中、トッシーは無言で震えていた


((((やっぱヘタレ))))


誰もがそう思ったのは間違いないだろう




現場へ着くなり名無しさんはトッシーをパトカーの上へあげた
そして自分も上へあがり声を掛けた



『(コソ)私がいうこと復唱してくださいね?』



「え?」



『(コソ)敵は完全に包囲した』



「(ボソ)敵は完全にほうした」


『声が小さいィ!!もっと腹から出してぇ!!』


「敵は完全に包囲した!!!!」


『(コソ)勝機は我らの手にあり』


「勝機は我らの手にありィ!!!」


『(コソ)今こそ奴らをぶった斬れ』


「今こそ月に代わって奴らにお仕置するのだァ!!!」


『なんですかァ!!それはァァァァァ!!!』


「え?こっちの方が気合いが入るかと・・」


『はァ・・もぅいいですよ・・・皆さん!!!突入開始します!!持ち場へ移動して下さい!!!』



名無しさんの掛け声で隊士たちが一斉にアジトを取り囲む

名無しさんはトッシーに向きなおすと



『あなたは此処にいて下さい、必ず私が貴方の大事な真選組を守りますからね』



と言ってパトカーから降り立った
そして刀に指をあてると、久々に己の血を舐めた



「突入ぅぅぅぅぅ!!!!!」



近藤の掛け声と共に地面を蹴る隊士たち
その雄叫びに気が付いて攘夷志士たちが建物の中から一斉に出てきた


その数の多さに名無しさんは素早く手前から順に斬っていく

何時も守ってくれる土方がいないため、力を使って応戦する名無しさんは強い
身軽な体を生かし瞬時に相手の死角に回り込み斬り付けていく



「名無しさん、力使ってるんですかィ?!」


『今日は土方さんも不在ですしね、数も多かったので・・・』


「関心はしませんが・・・無理しなさんな」


一言二言沖田と会話をするとお互い背中を預ける様に戦いだした



2〜3分戦った頃だろうか



最悪な事に血の効き目が切れかかってきた





マジですか!?
ちょっと効き目切れるの早くないですかァ!?



急激に重くなる体
その事に気を取られ後ろから襲いかかってくる浪士に気が付かなかった

気が付いた時にはもぅ遅い
刀はすでに擦りかかっており逃げる事も敵わないと思った名無しさんは思わず目を閉じた




目を閉じても痛みは来ない
聞こえてくるのは、ギリギリと刀が重なり合う音だけ
ゆっくり目を開けるとそこには土方の姿



『土方さん!!!』



「・・・大丈夫でござるか?・・・名無しさんたん・・・



『トッシーさん!?』





まさかあのヘタレなトッシーが自分を守ってくれるとは思わず目を丸くする




「・・・く・・やっぱ僕には戦いは向いてないでござる・・・」





徐々に押され始めるトッシー
名無しさんは慌てて敵の背後に回り込むとその背中を斬り付けた





『トッシーさん無事ですか!?』





腰が抜けてしまったトッシーに駆け寄ると
真っ青な顔をして笑っていた





「こ、こここ怖かったでござるぅぅぅう〜・・・でも、好きな人を守れって十四郎が煩くて」



『土方さんが?』





「名無しさんたん・・・力使ったでしょう?約束・・・・だろ?もう力は使わせねーって、ぜって―守るって」



『・・・・トッシー?』




「お前はただ黙って守られてやがれ!」







胸ポケットから煙草を取り出すと照れくさそうに笑いながら火を付けた





『・・・・土方さん?』



「・・・んだよ?」



『土方さァァァァァァん!!!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・紛らわしい事してんじゃねーですぅぅぅぅう!!!!!!!!!!!!』







思いっきり土方の頬に右ストレートを決めるとそのまま戦場に身を投じて行った




「なんで殴んのおォォォォォォ!!??」




土方の声を聞きながら名無しさんは二ヤリと笑い敵を斬っていく





やっぱり、土方さんもトッシーさんもどっちも同じです
どっちも私を大切に思ってくれる大好きな人
あのヘタレオタクキャラは正直辛いですけど
でも、どんな貴方も貴方なんですね




クスクスと笑っているといつの間にか自分の背中を守ってくれるように戦う土方
それが嬉しくて


大切な人を守りたいが為
大切な家族を守りたいが為
大切な仲間を守りたいが為
大切な居場所を守りたいが為



彼女は刀を振るう


















『あ、今度一緒にトモエちゃんみましょうってトッシーに言っておいて下さい』
「あ?なんでだよ?浮気か?」
『浮気も何も・・アレだって土方さんじゃないですか』
「俺以外の男の話なんかするんじゃねぇ!!」
『あ、同じような事トッシーさんにも言われました・・・』
「え?マジ?ヘタレなのにそんなこと言ったの?」






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