Sword of time-space・時空の刀(完結)

□番外編2
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真撰組の仕事、それは幕府に楯突く攘夷浪士を一掃する事。
他の岡っ引きや奉行所とは違い、浪士であるならばぶった斬れるという大義名分が付いてくる。
しかし、まだ真撰組はそう言った奉行所などよりも日が浅く、幕府や警察庁に良い様に使われるのもまた事実。


そんな訳でこの日も攘夷浪士の検挙とは別に落とし物を届けたりしていた。


『シロ―、次の交差点右』


「おー」


車の中で2人で煙草をふかすものだから車内が真っ白に曇る。しかしそんなのは関係無いかのように土方は華麗なハンドルさばきを見せた。
隣に座る麻裕子は流石に煙くさかったのだろう、助手席の窓を開けると少しだけ車内の紫煙を外へと逃がした。


『もー、シロ―の方の窓も開けろよ』


「あ?テメーだって煙草吸ってんだろ、ガタガタ言うんじゃねーよ」


『でも煙いもんは煙い』


外から新鮮な空気を取り込む、やっと車内がクリアになったところで麻裕子は行き先の確認のため、落とし物と住所を記載した紙を見た。
ちなみに落とし物は財布。本来ならば屯所まで取りに来させるのだが最近暇だったため麻裕子が届けると言ってしまったのだ。


「ったく、何で俺まで・・・」


『しょーがないじゃん、私こっちの世界の免許無いんだから。だからザキにでも乗せてもらうっていったろ?』


「・・・っせーな。良いんだよ、黙って道教えやがれ」


行くのは面倒臭い。けれどもだからといって山崎と2人きりにさせるのも嫌。そんな訳ですごすごと運転手をしている土方。
そんな彼に麻裕子は可笑しそうに喉で笑うと「次左」と指示を出した。




麻裕子が元の世界から返ってきてそろそろ一年になる。なんだかんだで土方も30歳。そろそろ身を固める事を意識する年齢だ。
しかし、かといってこちらの世界で戸籍も何もない麻裕子と結婚なんて事は出来るはずもなく、互いの関係は恋人同士と相も変わらなかった。
別にそれでも構わないと思ってはいるが、はやりなんだかんだで何かあった時妻では無い彼女に何も残せないかもしれない、まして2人の間に子が出来たとしてもその子がこの世界で生を受理される事も難しい。
現実問題が2人に押し寄せるが、当の本人はあまりその事を真剣に考えていないようだ。
何せ彼女はまだ19歳。
子供だとか結婚だとかは考えないのだろう。
しかし土方はもう30歳なのだ。
妻を持ちたいとか、自分の子を抱きたいとか、少なからずそんな願望がわき起こるのも確か。


・・・・どうにか出来ねーもんかなァ・・。


そんな事を考えながら運転をしているといつの間にか目的地の場所についていた。
土方を一人車内に残し、落とし物の財布を手に車を降りる麻裕子。そして持ち主の屋敷の呼び鈴を押しに行った。



そもそもそんな考えは贅沢なのかもしれない。結婚がどうとか、子供がどうとか、まず一緒にいられる事が奇跡に近いのだ。
その奇跡を大切にし、そんな願望は胸にしまうのが一番。
そう分かってはいるが、欲が出てくるのが人間と言うもの。


少し頭を冷やそうと土方は車内から降りると屋敷の中に入って行った麻裕子を車の外で待つ事にした。














2人が屯所に戻ると山崎が慌てた様子でこちらへと掛けてきた。


「ふ、副長!!麻裕子ちゃん!!大変です!!」


青ざめた顔で駆け寄ってくる山崎に何事か!と目を丸くしていると彼の口から忘れていた名前が飛び出してきた。


「時渡です!!!時渡をもった女性が屯所に!!!!!」


その言葉に驚いたのは麻裕子だけではない、土方もこれでもかと目を見開くと山崎の案内の元、その女性を待たせてあると言う客間まで走って行った。

慌ただしく客間の襖を開けるとそこには一人の女性。
女性と言っても若い訳では無く、もぅ60歳近いだろうか老女が座っていた。
その彼女の目の前の机の上には時渡、そしてその女性の向かいには沖田と近藤が困惑した表情で座っていた。


「あ!麻裕子ちゃん、トシおかえり!!」


「ったく遅せーでさァ」


2人の姿をみてホッと息を付く近藤、それに麻裕子は目配せをすると土方と一緒に部屋へと入った。


『お待たせしてすいませんでした。・・・えっと・・・』


「細谷芳子と申します、お初にお目にかかります、麻裕子さん。これ、あなたの刀ですよね?」


ニコリと笑いながら麻裕子の名を呼ぶ婆さん。それに更に全員が困惑した。


『あの・・・何故この刀を?』


そう、何故この刀をこの人は此処へ持って来たのか。この刀は一年前に海に投げ入れたのだ。
もしこの婆さんが拾って落とし物として届けに来たとしてもこれが彼女の物だと何故判断でき無い筈。
その事に5人は警戒しながら婆さんの顔を見た。




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