Sword of time-space・時空の刀(完結)

□第37話
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鼻につく独特な匂い
規則正しく鳴っている機械音
さわやかな風が頬を撫でる

時刻は昼過ぎなのだろうか?
どこからか学校帰りの子供たちの声が聞こえる




あぁ・・・・まだ寝ていたい
とっても良い夢を見てたの
とてもとても愛おしい夢を
大好きな人たちに囲まれて
愛している人が傍に居る夢を
だからまだ目を覚ましたくない
覚ましたくないんだよ





そんな気持ちとは裏腹に
麻裕子はゆっくりと目を覚ました



目の前に広がるのは白い天井



ここは?




そう思って体を起こそうとしたが、腹が痛くて起き上がれない
諦めて体の力を抜いた時、病室のドアが開いた

ガラッと言う音に目線を向ければ、そこには懐かしい顔




「麻裕子!!気がついたの!?」




あぁ・・・・そうか・・・




彼女の顔をみて、此処がどこだか分かった
そして麻裕子はゆっくりと笑顔を作ると彼女の名を呼んだ





『だたいま・・・お母さん』





私は帰ってきたんだ
腹が痛いのはあの時自分で自分を刺したから
段々思い出してきた記憶

麻裕子は泣きながら抱きしめてくれる母に顔を埋めながら少しだけ涙を流した


















『え?じゃぁ私が消えてからもう2年もたってたの?!』



母が摩り下ろしてくれたリンゴをスプーンで掬いながら麻裕子は驚きの声を上げた



「そうよ?いきなり赤い光に包まれたかと思うとパって消えちゃって・・・ほら、前にも神隠しにあったでしょ?それとおんなじ感じで」



そう言いながら母は花瓶の花を入れ替えている



2年
自分が向こうの世界に居たのは一年も満たなかった筈なのに・・
やっぱりシローが言うとおり、時間軸ってやつがぐちゃぐちゃなのか・・



ふに落ちないでもないが
もともとトリップなんて不思議な事が起こってたんだ
時間が可笑しくても仕方がない


そう納得して麻裕子は残りの摩り下ろしりんごを平らげた




「それにしてもビックリしたは!イキナリ目の前に血だらけで出てくるんですもの!お化けか何かかと思ったわよ!!」


『あ〜・・・すんません』


「ふふふ、でも無事で何よりだわ」



そう言って少し乱れた麻裕子の髪を優しく整える
その優しい手つきに思わず土方を思い出してしまい、ジンっと目頭が熱くなった



『お母さん・・・心配かけてごめんね?2年も帰らないでごめんね?』



その母の細い手を取る
心なしか昔より細くなった気がするのは間違いではない
自分の記憶にある母よりも一回り小さくなってしまっただろうか?
自分が消えて心配をかけてしまったから・・・




込み上げる涙は頬を伝って握っていた母の手に落ちた
その彼女の様子を見ていた母は同じように涙を流すと「いいのよ、無事なら、元気ならそれでいいの」と言って抱きしめてくれた


懐かしい母の匂いがする
優しくて暖かな、お母さんの匂い

その匂いに安心を覚え、麻裕子はゆっくりとまた眠りについた





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