Sword of time-space・時空の刀(完結)

□第36話
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ピチャリ

ピチャリ


男の呻き声と水音が薄暗い部屋に木霊する

周りの隊士たちは息を飲みその光景を黙って見ていた





「・・・オラ、まだ足りねえか?もっと殴ってほしいってか?あぁ!?」




土方の竹刀を握る手が強くなる
そして竹刀を振り上げるとなんの躊躇いも無く、吊るされた男目掛けて振り下ろす

バシっ!!という音と悲痛な叫びが同時に漏れる



その土方の狂気じみた表情に隊士らは思わず目を伏せて拷問と言う取り調べが終わるのを待っていた




こんだけやっても口を割らねェ
こりゃ本当に拷問を訓練されたに違いねェ
ならなんでコイツは今日の集会だけをスンナリ吐いた?
やっぱそこに俺らをおびき寄せる罠か?



土方の竹刀が止まる



「オイ、水ぶっ掛けろ」


「は、はい!!」



土方の言葉に控えていた隊士が桶に水を汲み、男にかける
殴られて出来た傷に水が滲み、男は小さく唸った
それを冷たい目線で眺めていた土方は再び竹刀を握る
そして濡れた体に再び鞭を打って行った


その狂気じみた姿に他の隊士すら怯えているのは分かってた
けれども、止める事は出来ねぇ
何が何でも吐かせなきゃなんねェ
麻裕子の為にも
あいつが今どんな目に合ってるかも分からねェ




彼女を想う一心で土方は鬼になる





「・・・ッチ、気失いやがったか・・オイ!もう一度水かけろ!!」




先程からコレの繰り返し
殴っては気を失い水をかけ、また殴る
死ぬギリギリまで相手を追い詰める
人間だれしも終わらない苦痛と絶望を感じた時
助かりたい一心で情報を吐く

稀に訓練された者は例外だが


鬼の副長の名に賭けても、こいつの口は割らなきゃなんねェ




土方は竹刀を乱暴に投げ捨てると、目を覚ました男に歩み寄った
そして恐ろしまでの黒笑みを向けると彼の人差し指を明後日の方向に折り曲げた



「ぐあああぁぁぁぁぁぁァ!!!!!!」



メキっという音と共に男が叫ぶ
それにニタリと笑うと次は中指に手をかけた



「テメーの指全部を違う方向に向け直してやるよ?」



ペキっ



「はい、2本目」


ペキっ



「はい、3本目」



4本目に手をかけたその時、男が叫んだ



「我々は雇われただけだァ!!雇い主は知らぬ!!ただ今日の夕刻に真選組を廃墟に来るよう仕向けろと頼まれただけだァァァァァ!!!」




スッと土方の目が細くなる
そして4本目の指折ると男の胸倉を掴み上げた




「そうかい、じゃぁそこにいけばお前らの大将さんがいるんだな」



「うぅ、ぅァァ・・・」


「・・・ッチ、」




4本目の指を折った事で白目をむいてしまった男の胸倉を乱暴に離すと土方は煙草を取り出し、拷問部屋を後にした



アイツの言っていた事は本当だろう
これ以上拷問したってアイツはこれ以上の情報をもっちゃいねェ
ならば
罠と分かってても廃墟に乗り込んで袋叩きにするか・・・



紫煙を肺に入れながら拷問部屋を出ると、すでに日は傾き始めていた


夕刻まで後少し

顔に飛び散った血を手の甲で拭うと土方は局長室へと向かった





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