SeRieS

□レッツ・ハンティング
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黒いテンガロンハットに青の柄シャツ。
ジャケットとボトムも黒で、まるでドレスコード。



人差し指でテンガロンハットを上げた時に見えた顔は。

キリッとした燃えるような熱い好戦的な瞳と頬に散らばった雀斑のアンギャップさに、私のハートは撃ち抜かれた。














レッツ・ハンティング















此処は新世界ミノール島。

あらゆる植物が実ると言われ、農園や果樹園や植物園に薬草園など世界中の植物がこの島で手に入る。

ミノール島は別名『オールガーデン』と呼ばれ、一説では伝説の『オールブルー』の話は『オールガーデン』の話が伝わる内に変わってしまったものだとも言われている。



そのミノール島は、私のオアシス。

わざわざ別宅を設けて、休暇の時は必ず此処で過ごす。
仕事柄休日が少ないから、連勤をしまくって連休を無理矢理取るという手法で、毎回一週間は此処で過ごすようにしているし、最悪全部部下に任せてでも過ごす。

………怖い上司には怒られるけど、その同列にだらけ切った上司もいるから強くは言われない。
だらけ切った彼に心から感謝を送りたい日々である。



そんな上司に多大なる影響を受けた私は、ミノール島でミノール島名産のミックスフルーツケーキにミックスベジタブルクッキーにミックスハーブティーを心から堪能している。

………いや、コレ本当に美味いわ。


「「ケーキんまーーーーーいっっっっっっ!!!!!!!!」」
「「…………………。」」
「「クッキーんまーーーーーいっっっっっっ!!!!!!!!」」
「「…………………。」」
「ハーブティーんまーーーーーいっっっっっっ!!!!!!!!」
「茶ァ苦ェ……………。」
「「そこ違う(違ェ)のかよっっっ!!!」」


隣に座る男ととことん台詞が被ったかと思えば、最後の最後で被らないというオチに思わずツッコンでしまうと、そのツッコミが被ってしまった。

それに顔を見合わせた私と隣の男は一瞬固まった後、プッと吹き出して同時に大笑いしてしまう。

大きなサングラスを掛けた若そうな男は笑う事でずり落ちそうになってる黒いテンガロンハットを押さえながら。


「お前ェ面白ェ女だな!!」
「いやいや、貴方こそ面白い方ですね!!」
「こんな面白ェ女と会ったのなんか俺初めてだ!!」


先に笑いを何とか押さえ込んだ私は、まだ笑っている男に身体を向けて手を差し出した。
すると、男も笑いを収めてくれて身体を向けて私の手を取った。

そして、互いに手を軽く握る。


「私、リンゴよ。」
「俺はエーs………えーっと……エーシーだ!!」
「エーシーね!宜しく!!」
「おぅ!宜しくな、リンゴ!!」


そう自己紹介し合うと、エーシーはこれから用事があるらしく、また機会があったらと席を立って出口へと向かう。

その後ろ姿を何となしに眺めていたら、此方を少し振り向いてから大きなサングラスを外して。
外したサングラスを持ったまま人差し指でテンガロンハットを上げながら、ニヤリと笑った。


「じゃあ、またな。」


そう言って、またサングラスを掛けたエーシーは、今度こそ外へと出て行った。


「く、食い逃げぇぇぇぇぇぇえええええええっっっ!!!!!!」


店主のおじさんが叫びながら、私の横を通り過ぎて外へと走って行ったけど、私は呆然とそれを見送った。
いや、仕事柄追い掛けなきゃ駄目なんだけど、正直それ所じゃない。

あのニヤリとした笑みに、私のハートはぶち抜かれてしまったんだから。


「エーシー、か…………。」


そう呟いていると、店のドアが静かに開いた。
それに私は眉をこれでもか!ってくらいに顰める。

どうやら店主が戻って来た訳では無く、私の優秀な部下が私の休暇の終わりを告げに来たようだ。

私の表情を見た部下は苦笑しながら、腕に掛けている私の制服を手渡す。


「そろそろ戻らないと怒られますよ、リンゴ少将。」
「マリンフォード遠いもんなー………。」
「はい、もう此処を発たないと無断欠勤になります。」


私の制服である『正義』と書かれたコートを部下のカインド大佐から受け取って羽織る。
エーシーとは反対側の椅子に置いていた海楼石製の二の腕まである長い篭手を嵌めた。





海軍本部少将、リンゴ。



それが私の肩書きだ。

そして、二の腕まである長い海楼石製の篭手とスーツの下に付けている膝下を守る海楼石製の脛当に、海楼石仕込みのブーツと対能力者向けの体術使いである事から、海軍で付けられたあだ名である私の二つ名は。



『悪魔狩りのリンゴ』



伝説の元海軍本部大将であるゼファー教官から新米時代に徹底的に鍛えられ、海軍本部に配属となってからはガープ中将の弟子となり、クザン大将の部下となった。
そんな私は悪魔の実の能力者の海賊相手を任務で担当し、今まで担当した全ての海賊の首を取るか捕縛してきた『無敗の女海兵』と呼ばれ、稀に『勝利の女神』とまで言われる。

………女神なんてガラじゃないんだけどね。
でも、海賊の襲撃の連絡を受けて急行して海賊をとっ捕まえた時、島の住民達から崇められて呼ばれちゃったのよね。
それが何故か広まったのよね。

本音を言えば、切実に勘弁して貰いたい。

だって仕事したくないもん、サボっていたいもん、ずっとミノール島で過ごしていたいもん。



そんな我儘は叶う筈もなく、無情にも私の休暇は終わりを告げた。


「錨を上げて!!帆もさっさと張る!!!!」
「「「「「はいっ!!!!」」」」」
「マリンフォードに帰るわよっ!!!!」
「「「「「はいっ!!!!」」」」」


甲板で声を張り上げれば、しっかりと敬礼して出航準備をせっせと整える優秀な部下達。
カインド大佐も後甲板で色々指示を飛ばしているようだ。

それに満足気に笑って、全員に聞こえるように更に声を張り上げた。



「マリンフォードへ向かって、出航ーーーーっっっっ!!!!!」



マリンフォードに帰ったらガープ中将とお茶しよーっと。










※ミノール島:『実る』から
※カインド
kind:親切な・優しい・思いやりのある・親切で・心からの
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