SeRieS

□残酷な人
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「…何なんだよい、お前等。」


いつもの眠たそうな双眼に憮然とした表情。

それにエースは安堵の息を吐きつつも、何故か不安が込み上げてきてしまう。



無理に作っているのではないか?

普段通りの表情は仮面なのではないか?

本当は…何か辛いのではないか?



言い知れぬ不安は膨れ上がり、遂には口に出してしまう。


「マルコさ、何かあったのか?」


その言葉に、細い目が軽く見開かれた。


“あ、珍しい。”


彼の驚く顔は余り見た事がない。

エースがぼんやりと冷静にそんな事を思っていると、マルコはふっと目を細めて、穏やかに微笑んだ。


「何でもねェよい。」

「嘘だ。」


間髪入れずにエースが思わずそう言えば、マルコは少し困った様に苦笑した。


だって、『何でもない』と言う割には、その瞳は確かに切なさを宿している。


エースが睨む様にして、次の言葉を促していると、マルコはとうとう小さく溜め息を吐いて、ハハッと乾いた声で笑った。


「…何かあったとしても、言えないねい。」


それに眉間に皺を寄せるエースに、やれやれと呆れた様に顔を緩く振るサッチ。

それに片方だけ口元を吊り上げて、マルコはまるで悪戯っ子の様にして笑った。



「こいつは、俺だけが知って良い…俺だけのもんなんだよい。」



_なァ、そうだろい?



まるで尋ねるかの如く、海へと視線を戻したマルコは、柔らかく寂しそうに笑っていた。



_俺だけに見て欲しいんだろい?

 なァ、リンゴ…。
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