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□掲げているのは革命の旗か
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天上金が払えず、また一つの国が消えようとしていた。
そのまま住民は捕まり、テキーラウルフへと護送される。
そして、そのまま死ぬまで労働させられるんだ。
それを、私達は許さない。
掲げているのは革命の旗か双眼鏡を必死に左右に動かしてテキーラウルフへと向かう護送船を探していると、コアラさんが「少し休憩したら?」と温かいココアの入ったマグカップを手渡された。
どうやら私は三時間ほど、ずっとマストの天辺で双眼鏡を覗いてたらしい。
「早く見付けたい気持ちは分かるけど、疲れて見落としちゃ意味無いわ。ちゃんと休憩取ること!」
「はーい、それじゃあ………十分休k「一時間休憩ね、リンゴ。」……え?」
「い・ち・じ・か・ん!!」
「…………はい、コアラさん。」
コアラさんに(強制的に)一時間の休憩を貰った私は、ココアを飲みながらヒラリとマストから飛び降りた。
そして空中をポンポンと飛ぶようにして駆け下りていく。
………海軍とかサイファーポールだと『月歩』って言うんだっけ?
同じ呼び方は嫌だから勝手に『風踏み』って私は名付けてるんだけど、全く浸透しないのよね……何だか悲しい。
少しだけしょげて船室に入ると。
「なァに眉下げてんだ?リンゴ。」
「あ、サボ!!どうしたの?」
ルンルンとサボの元に小走りすれば、サボは両手を広げて私が飛び込むのを待ってくれる。
だから、私も遠慮なくサボの胸へと飛び込んだ。
「……ったく、こんなに身体冷やしやがって。」
「だって護送船見付からないんだもん。」
「見付ける前から体力無くしてどうすんだよ。」
「………はっ!考えて無かった!!」
そんな事頭からすっぽり抜けていた私に、サボは「やっぱりな。」なんて笑った。
本当にサボは私の事は全てお見通しだと言わんばかりに、先回りしては私が無茶しないように気を配ってくれる。
さっきのコアラさんの件も、きっとサボがコアラさんに頼んだんだろうなって分かってる。
何かに夢中になると一直線な私に、間違って行き止まりに突っ走らないように、ちゃんと道を示してくれるのは、いつだってサボだ。
そして、いつもいつも。
こうやってサボは腕を広げて『こっちだよ』って、私が辿り着くのを待っててくれるの。
サボは革命軍の参謀総長という肩書きを持ってていつも忙しいのに。
でも、どんなに忙しくても私をちゃんと待っててくれる。
「……ねぇ、サボ。」
「ん?どうした?リンゴ。」
「もしも私がヘマして捕まって、テキーラウルフに護送されたらどうする?」
そう聞けば、サボは少し考えるフリだけして。
ふわりと笑った。
「助けるに決まってンだろ。」
「本当に?本当に本当に?」
「勿論だ。記憶を失って、更に何か失うなんて俺は嫌だからな。」
それに、ふふっと笑うと。
サボはまた少しだけ考えるフリをして。
ニヤッと悪戯っ子みたいに笑う。
「今のじゃ語弊があるな。」
「え?」
「俺は『大切な人』を失いたくねェ、それだけだ。」
悪戯な笑顔を慈しむような優しい笑顔に変えたサボは、私の両頬を包んで。
「リンゴは、大切な大切な、俺の女だ。何があっても離れたくなんかねェよ。」
そんな言葉と一緒に。
唇に触れるだけのキスを落としたサボは、いつものニッとした笑みを浮かべた。
その反面。
唇に残る感触が火傷したみたいに熱くて仕方のない私は。
真っ赤な顔をサボの胸に埋めるしか出来なかったの。
勿論、サボは優しく抱き締めてくれた。
いいえ、掲げるのは愛の旗です何故ならば
恋は戦争であると同時に
愛は革命なのだからfin.