SHoRT

□恋せよ若人
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恋せよ若人








今日も我等がモビー・ディック号は順調に航海中だ。

因みに、俺のリーゼントも今日も絶好調だ!

だがしかし、ただ一つだけ順調にはいかねェ絶不調な奴がいる。



「リンゴの奴、何処にいんだよ…。」



可愛い末っ子の弟が唇を尖らしながら、そんな事をぼやいていた。


因みにリンゴちゃんは、数年前に船に乗ったニ番隊の戦闘員の女の子だ。

そりゃあもうピチピチに若い女の子で、兄貴の贔屓目を引いても可愛い、マジで可愛い。

でも、勿論可愛いだけじゃない。


末っ子エースがまだ(ジンベエ曰く)ナイフみてェな小僧だった頃から既にモビーに乗ってた子なんだが、エースがニ番隊隊長なるまでは、ニ番隊をリンゴちゃんが纏め上げていた。

戦闘力は勿論だが、視野が広いから指揮力も高いし、何よりも瞳に何っつーか強さを宿してるっつーか。

兎に角、色んな意味で強い女の子だ。


そんなリンゴちゃんにエースは恋心を抱いてるみてェだが、当のリンゴちゃんは恋?何それ美味しいの?ってなノリだ。


「リンゴちゃんなら武器庫で武器の手入れしてたぞ?」

「マジか!?武器庫行ってくる!ありがとなサッチ!」


そう言って武器庫に走って行くエースのケツに、嬉しそうにブンブン左右振ってる尻尾が見えた気がしたのは気のせいじゃねェ筈だ。



そしてそれからは毎回同じで、エースが作業してるリンゴちゃんの邪魔をして、リンゴちゃんに怒られて。

いじけて甲板に突っ伏して、専ら俺とマルコにからかわれて、拗ねて寝ちまうんだな、コレが。


「そろそろじゃねェかい?」

「あー…そろそろだな。」

「今日、エースは何てリンゴに怒られて来んのかねい。」

「…何その笑顔。マジお前ェはイイ性格してんな、マルコ。」

「同じ様に笑ってる奴がよく言うよい。」


ハンッと鼻で笑うマルコに、まァ確かになと納得して、そろそろ全力で落ち込んでやって来るだろう弟を心待ちにしていると。

案の定、エースが船室に続くドアを勢い良くバァンッと開けて、ドスドスと足音を立てて甲板の真ん中へと歩いてきた。


それを見て、マルコとニヤリと顔を見合せて、甲板の真ん中へと向かう。



「どうしたんだよい?エース。」

「…何でもねェ。」

「素っ気ねェなー。ホラ、お兄様に相談してみなさい?ん?」

「…サッチ、ウゼェ。」

「それは同感だよい。」

「ちょ?!マルコサン??!!!」


あれ?

いつもと流れが違うぞ?


おかしい、絶対におかしい!!


そう思った俺は、俯くエースの顔を覗き込んで、はて?と首を傾げて尋ねた。








お前、何で顔赤ェの?








どうやら彼女にも

恋する季節が

訪れた模様です









fin.



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