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□嫌なヤツ
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目の前の男は、凄く嫌な奴だ。
嫌なヤツ「この俺が、誘ってんだぜェ?フッフッフッ…断る訳ねェよなァ?リンゴ。」
自意識過剰発言に俺様発言。
「フッフッフッ…さっさとあの馬鹿な海賊共、リンゴの為に沈めて来てやるから、さっさと準備してきなァ!」
いつも強気で不敵で。
そんな彼、ドンキホーテ・ドフラミンゴのサングラスの奥の見えない筈の瞳が、ギラリと輝いた気がした。
常々ニヤリと笑うドフラミンゴに最初は恐怖を覚えたが、今じゃこの男の笑顔は腹立つ要因でしかない。
「そんなに準備させたきゃ、その能力でも使えば?ド阿呆ミンゴ。」
呆れながらドフラミンゴの部屋を出ようとすると、その大きな体に見合った…いや、見合うというにはかなり語弊のある程に長い脚をもって、ドフラミンゴは一瞬で私とドアの間に移動した。
…この男も馬鹿だ。
わざわざ自分が動かなくても、その能力で私を操れば良いものを。
「アンタさ、馬鹿なの?」
「フッフッフッ、この俺にそんな口きけるのァリンゴ、てめェくらいだなァ!」
そう愉快そうに笑って、ドフラミンゴはピンクのモフモフした羽毛ジャケットに包み込む様にして、私を抱き締める。
その腕の力は、恐ろしく優しい。
…だから、嫌な奴なんだ。
「操れば良いじゃない、私を。」
「嫌がる女を無理矢理思い通りに操るってのも悪かねェなァ…。」
「…悪趣味。」
「フッフッフッ…だからリンゴにはしてねェだろうが。」
「…したら別れてるわよ。」
「ソイツはご免だ。それに…。」
『惚れた女は操らねェ主義だからなァ!』
…そんな事言うから、嫌な奴なのよ。
無理矢理ならば抵抗という形で隠せるのに。
それをしないから、どうやってこの感情を隠せば良いのか分からなくなる。
それを知ってる上で、優しく甘くするから、この熱を私は逃がす事が出来なくなるから。
ドフラミンゴは性質悪い、嫌な奴だと思う。
「どうせなら、ちゃんと目見せてから言ってくれる?目は口以上に語るものだし。」
不貞腐れた様にしてドフラミンゴから顔を背けると、いきなり顎をやんわりと掴まれて。
そのまま口付けられる…と思ったら、唇を触れ合わせたままでドフラミンゴはニヤリ笑った。
本当に、嫌な奴。
「そりゃァ出来ねェ相談だぜェ、リンゴ。」
彼の濃いサングラスのレンズに私の間抜けな瞳が映っている。
不機嫌に見せ掛けて、必死に照れ隠ししながらも期待に目を輝かせる、そんな私の瞳を今まさにドフラミンゴに凝視されてると思うと、また身体中に熱が回りそうだった。
「フッフッフッ…そんなに見てェか?リンゴ。」
「っ…当たり、前っっ!」
「なら、仕方ねェ…。」
その言葉に、サングラスを外す為に顔を離して、この強制的な羞恥プレイを終わらせて貰えると安堵した私の唇を。
彼はその長い舌でベロリと一周してなぞった後、またニヤリと笑って私の咥内に、その低音の声で言葉を投げ捨てた。
ベッドの中で見せてやるぜェ、リンゴ。嫌過ぎて
嫌になるけれど
一番嫌なのは
何だかんだで彼に操られる
私自身fin.