SHoRT

□帰趨
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黒煙に包まれる。



私の生まれた場所が。

私の育った場所が。

私の帰る場所が。



爆音と共に消え去った。







帰趨
(意:最終的に落ち着くところ。帰着するところ)







「早く殺して。」

「お前ェは死にたがりなのかい?」


今さっき、私の乗っていた海賊船を沈めた側の人間が何を言うか。


「帰る場所が無いのに、生きていて何になるの。」

「…リンゴっつったな。一つ聞くが、その手枷足枷は飾りかよい?」




違う。




幼い時に故郷を海賊に襲われて、私はそのまま捕虜として、その海賊船に乗せられた。



でも、それでも。



当時まだ幼かった私は、例え捕虜であろうと、失った生まれ故郷の代わりに、帰っても良い自分の帰れる場所を求めてて。

酷い扱いだとしても、帰れる場所がある、その事だけが救いだったんだ。


そんな長い間、私の帰る場所だった海賊船が、今正に海底へと沈んでいこうとしている。




「また、帰る場所、燃えちゃった、消えちゃった。」




さっきの戦闘後に、目の前にしゃがむ、パイナップルみたいな髪型した『マルコ』という名の男に抱えられて、そのまま白い鯨の様な海賊船に私は運ばれた。


そして今、目の前に見えるのは、燃えながら沈んでいく私の『帰る場所』だった船。

その光景を見て、思わず私はポツリと呟いた。




「おい、リンゴ。見てろい。」




そう言って彼は、甲板の大砲を自らに向けさせて発砲させた。


『自殺か?迷惑な…。』と思いきや、大砲の爆撃の中からフワリと青い炎が立ち上がる。

それは次第に形を成していき、ユラユラと揺れる青い炎を纏った両翼を、バサリと広げた男がいた。





何故に翼があるのか、とか。

何故に翼が燃えてるのか、とか。

何故に青い炎なのか、とか。



そんなのは大した事ではなくて、ただただ綺麗だと。



そう思った。





「俺は不死鳥だからよい、燃えねェし、易々と消えたりもしねェ。」


だから、何だ。


「リンゴの帰る場所は、此処じゃ駄目かい?」


此処って、何処?


「ほら、来いよい…リンゴ。」





そう言って更に翼を広げて、マルコが言った言葉に。

気付くと私は大泣きしながら、マルコの体に、しがみ付いていたんだ。






「お帰り、リンゴ。」







私の帰る場所

それは

貴方の腕の中でした







fin.



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