SHoRT
□帰趨
1ページ/1ページ
黒煙に包まれる。
私の生まれた場所が。
私の育った場所が。
私の帰る場所が。
爆音と共に消え去った。帰趨(意:最終的に落ち着くところ。帰着するところ)
「早く殺して。」
「お前ェは死にたがりなのかい?」
今さっき、私の乗っていた海賊船を沈めた側の人間が何を言うか。
「帰る場所が無いのに、生きていて何になるの。」
「…リンゴっつったな。一つ聞くが、その手枷足枷は飾りかよい?」
違う。
幼い時に故郷を海賊に襲われて、私はそのまま捕虜として、その海賊船に乗せられた。
でも、それでも。
当時まだ幼かった私は、例え捕虜であろうと、失った生まれ故郷の代わりに、帰っても良い自分の帰れる場所を求めてて。
酷い扱いだとしても、帰れる場所がある、その事だけが救いだったんだ。
そんな長い間、私の帰る場所だった海賊船が、今正に海底へと沈んでいこうとしている。
「また、帰る場所、燃えちゃった、消えちゃった。」
さっきの戦闘後に、目の前にしゃがむ、パイナップルみたいな髪型した『マルコ』という名の男に抱えられて、そのまま白い鯨の様な海賊船に私は運ばれた。
そして今、目の前に見えるのは、燃えながら沈んでいく私の『帰る場所』だった船。
その光景を見て、思わず私はポツリと呟いた。
「おい、リンゴ。見てろい。」
そう言って彼は、甲板の大砲を自らに向けさせて発砲させた。
『自殺か?迷惑な…。』と思いきや、大砲の爆撃の中からフワリと青い炎が立ち上がる。
それは次第に形を成していき、ユラユラと揺れる青い炎を纏った両翼を、バサリと広げた男がいた。
何故に翼があるのか、とか。
何故に翼が燃えてるのか、とか。
何故に青い炎なのか、とか。
そんなのは大した事ではなくて、ただただ綺麗だと。
そう思った。
「俺は不死鳥だからよい、燃えねェし、易々と消えたりもしねェ。」
だから、何だ。
「リンゴの帰る場所は、此処じゃ駄目かい?」
此処って、何処?
「ほら、来いよい…リンゴ。」
そう言って更に翼を広げて、マルコが言った言葉に。
気付くと私は大泣きしながら、マルコの体に、しがみ付いていたんだ。
「お帰り、リンゴ。」私の帰る場所
それは
貴方の腕の中でしたfin.