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□あえか
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あえか(意:か弱く、頼りない様)
戦闘中に、負傷した。
海賊なんだから、負傷するなんてのは当たり前。
しかも、軽いとは言い難いが重いとも言えない、つまり命に別状は無い程度の怪我だった。
それに対して皆は、『まだまだだな、リンゴ。』とか『そんなの怪我にも入らねェぞ。』とか軽口叩いてたけど。
…唯一人だけが、違った。
「っ…、リンゴっ!」
例の戦闘があった日から、マルコが夢にうなされる様になった。
あの日の戦闘で、私は丁度静脈の近くを怪我した。
その為、傷の割には出血だけが異様に酷く、まるで致命傷を負って死んでいくかの様にして、私は貧血で倒れたらしい。
『死ぬかと、思った…。』輸血してあっさりと目覚めた私に、マルコは声を擦れさせて、震わせて、そう言った。
『リンゴが、死ぬかと、思った。』
『心臓が、止まるかと、思ったよい。』
『リンゴが死ぬと思った瞬間…俺も、心臓止まって、死ぬんじゃねェかと、思った。』私は海賊よ。
いつ死んだっておかしくないわ。
そんなの、私よりも長く海賊やってるマルコの方が、よく知ってる筈なのに。
『自分が死ぬ覚悟は出来てんだがねい…リンゴが死ぬ覚悟は、全く出来てねェ、みたいだよい。』私の死が、とても恐ろしいと。
私が居なくなる事が、恐いんだと。
あの日、そう呟きながら頭を抱えるマルコを見て、私は言葉を失った。
マルコは誰よりも強いと、私は思ってたんだ。
誰よりも頼りになって、誰よりも逞しいと、私は思ってたんだ。
だけど…。
「いく、な…リンゴ。いか、ないで、くれい、リンゴ…。」
『俺を置いて、逝かないでくれ。』
眉間に皺を深く刻んで、両目蓋から雫を零しながら、苦しそうに紡ぐマルコの寝言は、それとは全く正反対で。
愛する貴方は、とても儚い。そんな弱さも愛しくて
貴方の為に死なない覚悟を
私は決めたfin.