SHoRT

□時雨心地
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時雨心地
(意:涙が出そうになる気持ち)






最近、マルコの奴が変わったらしい。

って、ラクヨウが真顔で言うもんだから。


どう変わったのかって聞きゃァ、知らねェんだと。

そいつは随分と曖昧過ぎんじゃァねェかと言えば、隊員から聞いた噂話だと来たもんだ。



ちィっとばかし興味そそられた俺は、今日はモビーに邪魔する事にした。





…あァ、確かに。


随分とマルコは変わっちまったみてェだな。



あいつァ…あんな笑う奴だったか?と、思わず我が目を疑っちまった。



いやァ、いくらマルコと言えども、笑うくらいはするだろうが。

だがな、あんな笑い方は長年の付き合いの俺でも初めて見た。




「なァ、リンゴ。」

「んー?何ですか?マルコ隊長。」

「…何でもねェよい。」

「…へ?」

「リンゴの名前、呼びたかっただけだよい。」

「もうっ…。」




確か、あのマルコの傍にいる顔真っ赤にした嬢ちゃんは、一番隊隊員のリンゴっつったか。

マルコと最近付き合い始めたとは聞いちゃァいたが…。





「俺ァ生まれてこの方、初めてバカップルってのを見たぜ。」

「あ、イゾウもそう思うか?」

「ん、あァ。サッチもか?」

「どっからどう見てもバカップルだろ、あれ。」


付き合ってから毎日あんなんだぜ。

見てるこっちが恥ずかしくなっちまう位にイチャつくマルコとリンゴの嬢ちゃん二人を、サッチが呆れながら見て、うげェっと口に出すが。


その顔は、反対に幸せそのもので。

そういう俺も、実は幸せな気分になっちまっていた。



「あいつァ人に対して、無関心無頓着だと思っていたんだがなァ。」

「ついでに無神経もな。」

「そりゃァ、サッチにだけだろ。」

「何、イゾウさんも無神経な訳?!」


酷ォいなんて気色悪ィ声出しながら、泣き真似しやがるサッチを無視して、マルコの奴に視線を向けると、当たり前の様に隣にはリンゴの嬢ちゃんがいた。





家族を愛しこそすれ、同時に家族に対しては博愛主義であるマルコが。

一人の人間だけに関心持ったり、執着なんざ絶対しねェで、孤高に飛んできた不死鳥が。


ただの一人の男として、一人の女に夢中になるとは。





常に無表情で、笑っても悪人面で、稀に(親父絡みだと)ガキみてェに笑うマルコが。


あんなに誰かを愛おしそうに、幸せそうに、柔らかく穏やかに笑うなんて。





そんな光景を見れる日が来るたァ、俺ァ微塵も思わなかったよ。



でも、何でかねェ。

そんなお前ェさん見てると、俺まで嬉しくなっちまう。






幸せ過ぎて泣けちまいそうだ、なんて。







年取ると

涙腺が緩んで仕方ねェや






fin.



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