SHoRT

□二人揃わないと、ダメだって事
1ページ/1ページ



トラファルガ・ロー。


それが、あの男の名前。



リンゴ。


それが、あの女の名前。



あの二人は何時から共に居るのか。

誰も、知らない。



死の外科医の異名を持つトラファルガ・ローは、残虐さで有名だ。

そんな男の傍にいるリンゴという女も、恐らく神経がイカレてる筈だ。



だけど。




「お前、俺の船に来い。俺が世界を見せてやる。」




そう言って、刺青だらけの右手を差し出した隈の酷い男と。




「ローに従うと良いわ。必ずローは、世界を取る。」




そう自信満々に言う、病的に細く白い女に。

あの時、俺はただ頭を下げる事しか出来なかったんだ。





「ねー、シャチ!」

「何だよ、リンゴ。」

「ローが拗ねた。」

「…おまっ、キャプテンに何したんだよ!」


シャチに怒られているリンゴ。


あの時、俺が頭を下げた相手の一人であるリンゴ。

コイツは実際の所、毎日の様にキャプテンであるトラファルガ・ローを怒らせて。

そのせいで機嫌を損ねたキャプテンが俺かシャチに八つ当たりして。

その様子をケラケラ笑いながら見てる様な性質悪い女だった。


「おいっ!何、我関せず貫いてんだっ!ペンギンっ!!」

「あァ、いや…。」


だが、一番性質が悪いのがシャチの後ろの存在だ。




「…シャチ、誰の許可を得て俺の女に怒鳴ってんだ?」




…キャプテンのお出ましだ。


ひぃィィィっッッッ!!!なんて情けねェ叫びを上げ、キャプテンの能力で分解されたシャチ。

…御愁傷様。



「ロー、機嫌直った?」

「いや、まだだ。」

「もー…根に持たないでよ。」

「だったらお前が治せ、リンゴ。仮にも医者だろ?」


キャプテンがニヤリと笑う。

こうなったら数時間は船長室近辺は、立ち入り禁止だな。


『あの』声を聞かれたとなると、リンゴの機嫌が悪くなる。

そうなると、必然的にキャプテンの機嫌も悪くなる。


…本当に、性質が悪い。



だけど、俺は知っている。



普段から冷めてるキャプテンが、リンゴにだけ子供みたいに甘える事に。

そしてリンゴも、そんなキャプテンを受け入れて慈しんでいる事に。



本当に性質が悪いんだが。


きっと、リンゴはキャプテンを船長では無く、一人の男として接しているからこそ。

キャプテンにとってリンゴは、船長という重過ぎる肩書きを、唯一下ろせる存在なのだ。



だから、余り良いとは言えない生い立ちから生まれたトラウマを持つキャプテンは、リンゴという存在によって精神を和らげている。

そして、リンゴも過去に負った心の深い傷を、そんなキャプテンに癒されている。



つまり、彼等は。


相違的であり。

相対的であり。

相互的であり。

相関するのだ。



そして、何よりも、相愛的だ。



…簡単に言ってしまえば、こうだ。







二人揃わないと、駄目だって事。







出来れば

被害最小限でお願いしたいがな








fin.



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ