SHoRT

□一人前になりましょう
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今日もマルコ隊長は格好良い。



散らばる隊員全員に気を配って。

怠けてる隊員を蹴り飛ばして。

頑張ってる隊員を褒めて。


私は一番隊の隊員達を羨ましいなと、少し思う。



「悪かったな、リンゴ。五番隊に入れてしまって。」



一番隊を眩しそうに眺める私に、ビスタ隊長が苦笑しながら言った。


「な、ななな、何をっ!?」

「顔に『一番隊に入りたかった』って、書いてあるぞ。」


ニヤリと意地悪な笑顔で、髭を整えながら言うビスタ隊長に。

私は顔を真っ赤にさせる。


「わ、私は剣士ですっ!自分から五番隊に立候補したんですっ!」


そうなのだ。

元々、花剣のビスタに弟子入りする為に、私は白ひげ海賊団に入団したのだ。

そんな私は、親父さんのご厚意で五番隊に配属してもらえた上に、毎日ビスタ隊長に修行してもらえるという、最高に恵まれた立場にいる。


恋心という、余りにも不純な動機で隊を移動するなんて我が儘は勿論出来ないし、何よりもそれを私が望んでいない。


「私は…親父さんの名を背負う事と、ビスタ隊長の下で剣を振るえる事を、最大の誇りと感じていますっっ!!」

「そいつは頼もしい限りだ。」


ハッハッハッと爽やかな笑い声で笑うビスタ隊長に、私も嬉しくてニンマリと笑ってしまう。




_ドガシャァァーンッ!




いきなり甲板中に鳴り響いた、何かが物凄い勢いで派手にぶつかった様な音に、私はビクリと体を震わせた。

恐る恐る音のした方向を振り返ると…。


「…またサッチ隊長、何かやらかしたんですかね?」


其処には、マルコ隊長に吹き飛ばされたサッチ隊長の姿が。

あれでは、毎朝気合い入ってるリーゼントが台無しだ。


まぁ、サッチ隊長がマルコ隊長に蹴り飛ばされてるのは日常茶飯事の事。

恐らく、サッチ隊長がマルコ隊長をからかいでもしたのだろう。


私は余り気にも止めずに、直ぐにビスタ隊長に向き合った。


「…どうしました?ビスタ隊長。」

「フフッ…い、いや、プッ…ハッハッハッ!」

「ビスタ隊長…?」

「いやいや、何でも無いさ…プッ、フフッ…。…さて、今日も修行始めるぞ、リンゴ。」

「はいっ!」


また、とびきりの笑顔で答えると…。




_ドゴゴゴォォーンッ!!




“…今度は誰だ?”


またもやの騒音にチラリと視線を其方にやると、壁に頭から突っ込んでるエース隊長がいた。


“またエース隊長も、何かやらかしたのか…。”


ハァと溜め息一つ吐いてから、私は妙に愉快そうなビスタ隊長に向かって剣を抜いた。


「今日も御手合せ、お願いします。」

「フフッ…あァ、任せろ。」

「…それ、笑いながら言います?」

「フフッ…何時もの事だろう?」

「そう言えばそうですね。私と手合わせ楽しいですか?」

「うむ、それもあるが…リンゴと手合わせしてると、楽しい事が起きるからな。」


その言葉に首を傾げると、ビスタ隊長から返ってきたのは、気にするなとの一言だけ。

まぁいいや、と私も軽くスルーして剣柄をギュッと握った。



剣士として半人前な私。

早く一人前にならないと、隊長達のサポートすら出来ないから。


早くマルコ隊長みたいな、一人前以上の海賊を目指さないと、ね。






一人前になりましょう。







ヒソヒソ…
「…なァ、サッチ。マルコってさ、海賊としてなら一人前以上なのにな…。」

ヒソヒソ…
「…分かるぜ、エース。アイツは、恋する男としては半人前以下なんだ、仕方ねェ。」

ヒソヒソ…
「毎回毎回、ビスタへの嫉妬に俺とサッチ巻き込むなよな…。」

ヒソヒソ…
「全くもって正論だぜ、エース。」

「何か言ったかい?サッチ、エース。」

「「…何デモ無イデス。」」







fin.






ちょいと分かりにくいかもなので、説明を。

実は、マルコもリンゴ様が好きで。
いつもリンゴ様に満面の笑みを向けられているビスタ隊長に、嫉妬してはサッチとエースに八つ当たりしている、という事です。



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