SHoRT

□死が二人を分かつまで
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死が二人を分かつまで





走馬灯の様に、とはよく言ったもんだ。


俺は親父に拾われる前は、何してたんだっけ?

思い出せねェって事は、その程度だって訳だ。




「友、だ…思、てた…。」




少なくとも、俺は。




「…か、ぞく…だ、た…よな…?」




ティーチ、お前ェを友達だと。

家族だと、そう信じてたんだ。




涙止まんねェし、鼻水出てくっし、涎なんだか血なんだか知らねェが何か口から出てくっし。

なんかもう、情けねェわ、悲しいわ、悔しいわで、ぐっちゃぐちゃなんだけど。



そんな事よりも…。





「リンゴ…。」





そう、リンゴが心配なんだけど。


自分は死にかけてるっつーのに。

アイツの事しか、頭に浮かばねェなんて。

俺、どうしちゃった訳?




「や、く…そく…守、れな、かっ…。」




そうそう、約束。

リンゴとの約束が、心残りな訳だ。






健やかなる時も

病める時も

死が二人を分かつまで

私はサッチを愛する事を

誓います







恥ずかしそうにそう言ったのは、つい最近の様で、随分昔だったな。


俺ァ自慢じゃねェが、照れ屋で通してる訳よ?

好きだとか、愛してるだとか、言った事無い訳よ?




…何で言わなかったんだ?俺。




後悔先に立たず、なんて言うが。

今回くらい、立っても良かったんじゃねェの?


いや、我が儘だって分かってるよ?



でも、今回だけでも、立って欲しかったんだがな。




『次の島は、私とデートだからね!』

あァ、分かってる。


『ねぇ、料理教えて!サッチ。』

キッチン破壊しねェならな。


『サッチ!明日はオムライス食べたいな。』

仕方ねェな、特製オムライス作ってやるよ。


『今ねー、サッチの新しいスカーフ作ってるの!』

これ大分ボロくなってきちまったからな。






『サッチ、結婚…しようね?』






絶対ェ叶えてやろうって、思ってたのにな。



「…リンゴ。」



出来そうにねェって、あんまりじゃねェか?

いや、これも我が儘だって知ってるさ。


お互い何時でも死ぬ覚悟は有ったからな。


でもよォ、神サマ。





今じゃなきゃ、ダメだったのか?





「す、こ…か…る、時…も。」


せめて、リンゴと結婚して。



「病め…と、き…。」


リンゴそっくりの、有り得ねェくらい可愛いガキ産んで。



「死…ふた…分か、つ…で…。」


それを、親父に見せて。



「俺、は…リンゴ…を…。」


孫だっつってさ。



「あ、いす…こ、と…。」


親父喜ばしてやりてェって。




そんな細やかな願いも、我が儘って神サマは言うのか?




あァ、涙止まんねェし。

鼻水やら涎やらで、みっともねェし。




そんな姿、リンゴには見せれねェから。


リンゴが好きだっつった顔で、さ。





…笑うからよ。





多少の格好悪さは、許してくれよ?





_ガフッ!





あァ、こりゃァ…アレだ。

もう喋るなってヤツだ。


まァ、俺は喋るがな。





「ぢが、い゙…ば、ずっ…!」





アイツの大好きな笑顔で、瞳閉じれば。

やっぱり、其処には…ほら。





_俺の大好きな、笑顔





…あァ、もう墜ちそうだ。






結婚式は、花畑でな。






おっと

言い忘れるとこだったぜ

リンゴ

世界一愛してる







fin.



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