SHoRT
□低い体温の温もり
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_サクサクサク
辺り一面真っ白な世界。
冬島の冬は、恐ろしいまでに雪が降る。
付けた足跡も、雪が直ぐに降り積もり、更には吹雪が簡単に掻き消していく。
このまま、白に溶けてしまおうか…。
クスリと笑いながら、サクサクサクと歩みを進めた。
寒さに体をフルリと震わせて、かじかむ手を擦り合わせて、余り暖かくならない事に苦笑して。
それでも、良いの。
寒さに身を凍えさせてしまいたい。
ふと、顔を上げると街の灯がぼんやりと霞む様にして、見えてきた。
知らず知らずに、街へ向かう私の歩はどんどん早まっていく。
目当ての酒場まで、もう少し。
あと、五分。
あと、三分。
あと、十歩。
あと、一歩。
やっと、ドアの前まで着いた時、カラリとドアの鐘が鳴った。
「やっと来たかよい、リンゴ。」
待ちくたびれちまったと、彼の癖である首筋に手を当てる動作に、思わず顔が綻んでしまう。
さっさと私を酒場の中へ入れようと私の右手を掴んだ彼は、ギョッと目を見開いて、そのままグイッと勢いよく私を引き寄せる。
_バタンッ
風の力も手伝い、ドアの閉まる音が大きく響いた事に、ビクリと体を震わすも、気付いた時には彼の暖かい腕に私の体は包まれていた。
「マルコ、濡れちゃう。」
「んなの、構わねェよい。」
マルコの後ろでは、船員の皆が此方をニヤニヤ笑いながら冷やかすけれど、マルコは全く気にもしていない様子で。
ドクンドクンと心臓の音に比例する様に、頬が火照ってくるのを感じた。
「…リンゴ、冷え過ぎだい。」
だから、買い物なんてエースに任せりゃァ良いっつったのによい。
リンゴが行く事、無かったんだい。
そう言って私を抱き締めるマルコの体は、本当に暖かかった。
低い体温の温もり体温の低いマルコの温もり感じたくて
わざと体を冷やしたんだと
そう言ったら
貴方は怒りますか?fin.