SHoRT
□泡沫
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それは泡のように消えてゆく
儚い儚い恋でした
泡沫ルンルンなんて、そんな効果音がピッタリの足取りで歩いていると、前からオレンジのテンガロンハットが見えた。
思わず胸をドキッとさせて、羽根が生えたみたいに軽くなる足を、前へ前へと進ませる。
あともう少しでエース隊長と会話出来ると分かると、こんなにも胸が弾む。
そろそろエース隊長に声を掛けよう、そんな時。
「エース。」
「おォ。」
横からエース隊長へと伸びる、細くて白い腕。
其処から、豊満なバストに緩やかに長くウェーブ掛かった艶やかなブロンド。
スラリと長い脚に、同じ女とは思えない位の美しいスタイル。
此処まできたら勿論、顔だって絶世の美女。
「また仕事サボってるの?」
「あ、いや…。」
ダメじゃない、と紡ぐ桜色の唇は美しく清らかで。
ポリポリとそばかすのある頬を掻くエース隊長の耳が、ほんのりと赤く色付いたのが直ぐに分かった。
エース隊長の隣に立つ、二番隊隊員である彼女を見つめるエース隊長の瞳は、いつも優しく穏やかで。
更にその奥には、慈しむ様な愛が詰まってる事…私、知ってるよ。
「あ、リンゴっ!丁度良かったわ。」
エースがまた仕事サボるの。
リンゴからも言ってちょうだい。
彼女は少し困った様に言うけれど、その声には愛情が詰め込まれてて。
そんな彼女の声に、『えー…。』と返すエース隊長の声にも勿論愛情が詰め込まれてて。
「エース隊長、またですか?」
ケラケラと笑いながら、そう言う私は、上手く笑えてるだろうか?
「なっ、リンゴ。見逃してくれよっ!」
顔の前で両手を合わせてウインクするエース隊長に、ドクンと胸が高鳴るけれど。
直ぐに隣の彼女に視線を向けて、愛おしそうに憎まれ口を叩き出すのも、いつもの事。
そんないつもの事に。
いつもの様に私の胸は。
ズキンと、泣いた。
分かってるんだ。
分かってるんだ。
エース隊長の瞳には、彼女しか映らないって。
分かってるんだ。
分かってるんだ。
私の入り込む余地は無いって。
分かってるんだ。
分かってるんだ。
この恋は、どんなに願っても報われないって。
…分かってる。
私の想いは、何時だって膨らんでは、直ぐにパチンと消えていく。
まるで、泡の様に。どうせなら
そのまま
消えてしまえば良いのにfin.