SHoRT

□貴方が好き過ぎて。
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「泣くなよい。」


そんなの無理。


「どうしたってェんだい?」


分からないの。


ただただ、涙を零す私にマルコは溜め息を吐いた。

それに、ビクッと体が震える。



…呆れられちゃった。



それが酷く悲しくて。

またポロリと雫が一つ、頬を流れた。


マルコは少し荒れた両の掌で、私の両頬を包んで。

親指でグイッと、涙を拭った。



「言わなきゃ分かんねェだろい?」



低く擦れた声で、囁く様に優しさをふんだんに込めた色を乗せて、覗き込む様に訊ねられた。


それに、トクリと胸が鳴って。

何かが込み上げてきて。


堪え切れずに、また涙が、溢れた。




「…リンゴ。」




諭すようなその声に、顔を静かに上げると。

羽の様な優しいキスが瞼に落とされる。


その儘、額や頬や鼻、顔中に優しいキスを落とされて、最後に唇に、触れた。

カサカサの厚い唇から、マルコの暖かさが伝わってきて、私はまたもやポロポロと泣いてしまう。


そんな私に困った様に笑うマルコ。




違うの、困らせたい訳じゃないの。




やっとの思いで、私は言葉を紡ぐ。






貴方が好き過ぎて。







そう言ったら

驚いた様に目を丸くして

フワリと笑って

『俺もだよい。』と

貴方は言った






fin.



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