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□神様、どうか。
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神様なんて、居ない。
そんなのは、子供の頃から知っていた。
信じた事なんて、一度も無い。
『あ、リンゴっ!今日のメシ肉だってよ!』
『あははっ!エース隊長は本当に肉好きだねー。』
『お陰で食糧庫、肉だらけだっての。』
『あー…サッチ隊長、お疲れ様です。』
『グララララッ!随分と賑やかじゃねェか、バカ息子共。』
『娘も居ますよっ!親父さんっ!』平和と呼べる日々が走馬灯の様に、駆け巡る。
親父さんとエースの墓は、恐ろしいくらいに立派に堂々としていて。
本当に眩しくて、目が眩みそうだった。
でも、目を瞑っちゃダメ。
目を逸らすなんて、もっとダメ。
『ったく、エースもサッチもリンゴも、さっさと持ち場に戻れよいっ!』
『親父、今日は体調良いのかい?』何時も、何時でも、皆を見守って。
何時も、何時でも、皆を大切に想って。
何時も、何時でも、皆を愛してて。
そんなマルコ隊長が、決して目を瞑らずに。
決して目を逸らさずに、二人の墓標を見つめてる。
責任感が強くて、皆の兄貴的存在で、皆から頼られる、そんな背中を持つ逞しい背中を、ピシッと伸ばして、見つめてる。
…それが、とても、痛かった。
サッチ隊長。
エース隊長。
親父さん。
どうか全てを必死で受け入れようとする彼を。
どうか全てを必死で背負おうとする彼を。
これからも見つめて、見守っていて下さい。
今の私には、マルコ隊長の悲しみも何もかもを、支える力も何も無いから。
私が強くなる、その日まで。
必死に涙を堪えて、健気に立ち続ける彼を、どうか支えてあげて。
そして、私は初めて神様に祈った。
身勝手なのはお互い様よ。
これはもう、貴方にしか頼めない。
神様、どうか。この先ずっと
この人が
何も失わずに済みます様にfin.