SHoRT

□宣誓
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あの誓いは、叶わない。


ずっとずっと


そう、思っていた。






宣誓






海賊王・ロジャーが処刑されてから、二十年近い歳月が過ぎた。

それは、私とシャンクスが最後に会った日からの年月と同じな訳だから、私は彼と二十年近くも会って無い。






『俺と来いよ、リンゴっ!』

『シャンクス、知ってるでしょ?私はロジャー船長以外をキャプテンとは認めない。遠く知らない町で静かに暮らすわ。』

『おいっ、リンゴっ!』





_.......っ!!






シャンクスの声は、荒れ狂う風の音に、掻き消された。






ロジャー船長が処刑された日から、私は陸へと降りた。


死ぬまで海で生きると決めたのに、そんな決意の源だったロジャー船長は、もう居ない。


そんな陸の暮らしは、毎日毎日本当に無気力で。

この二十年間で生きる意味さえも見失いそうな毎日は、まるで漂流中の航海の様な日々だった。



“長く海から離れてるってのに…。”



無意識に海で例えてしまう自分に、思わず溜め息と共に自嘲する。




それは、日々の暮らしに飽き飽きしていた、そんな頃に唐突にやって来たのだ。





_カツンッ



元海賊の経験からか、小さな物音に私は瞬時に空気をピンッと張り詰めさせた。


“…海軍か?”


ロジャー海賊団元船員は、未だに手配書が破棄されていない。

その為、勿論私もまだ海軍に追われる身なのだ。


静かに気配に集中して、辺りを窺って。


そして、私は、気付いた。



“…っっ!!?”



まさか、そんな筈無い。

だって、まさか、世界から忘れ去られた様なこんな島に…。





「リンゴ。」





_居る筈が、無いのに





「シャン、クス…?」

「あァ、お互い随分年食ったなァ。」


だっはっはっはっと、あの頃と変わらない豪快な笑い声に、私は泣きそうになる。


「どうして…?」


四皇の一人に数えられる彼が、新世界に居る筈の彼が、何故?


「どうして?それを聞くのか?」


だって、シャンクスの口から聞かないと、勘違いしてしまう。

そんなのは、嫌。


二十年間、待ち侘びた淡く儚い期待が、砕け散ってしまうもの。



だから…。



「言わないと、分からないわ。」


必死な私の、最後の強がり。


そんなもの、シャンクスには通じないのは分かってる。

そして、シャンクスは分かってる私を、分かってる。


ふっと小さく息を吐いてから、あの輝くばかりの笑顔で、貴方は言ったんだ。



「あの時、リンゴに誓った言葉、果たしに来たんだ。」



まァ、一方的に誓ったんだがな。


そう苦笑するシャンクスに、私はとうとう涙を零した。






『必ず迎えに行くっ!!』







抱き締めた腕は

たった一本だけなのに

世界一

その右腕が力強く感じたんだ







fin.



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