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□我が儘ダーリン
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今日の午後は一番隊が操舵当番で。
一番隊隊員の私は操舵室担当だった為、先輩隊員達と他愛も無い話をしながら、操舵室の扉を開けたんだ。
…あれ?
甲板で指示飛ばしてる筈のマルコ隊長が、何故此処にいるんだろう?
我が儘ダーリン「あれ?マルコ隊長?」
それは、一緒に来た先輩隊員も思ったらしく、頭に沢山の『?』を浮かべていた。
当然私も、頭上に沢山浮かんでいた筈だ。
「あァ、今日は俺とリンゴで操舵室担当だよい。」
…そうだったのか?
いや、マルコ隊長は仮にも我が一番隊の隊長だ。
隊長は航海士の指示の下、沢山いる隊員達を動かして帆の操作をする為に、甲板にいるのが常である。
その隊長が、何故に操舵室担当?
甲板からの指示で舵取りをする操舵室担当に、何故甲板で指示する隊長が充てられる?
「いやいやいや、マルコ隊長は甲板じゃ…。」
「俺と一緒は不服かよい、リンゴ。」
いや、そんな事は無い。
寧ろ、恋人のマルコ隊長と二人きりとか、幸せ過ぎて昇天出来る。
だが、しかしっ!
「…誰が指示するんだ?」
そう、それっ!
よく言ったぞ、先輩っ!
マルコ隊長以外に一番隊を纏め上げられる人がいただろうか?
いや、白ひげ海賊団の古株が多い一番隊を纏め上げられるとしたら、隊長クラスだけな筈。
「…サッチが引き続きやるんだとよい。」
嘘だ。
あの『THE☆面倒臭がり』のサッチ隊長が、午前から引き続きやるなんて有り得ない。
寧ろ、担当だった午前中ですら『面倒臭い。』と連呼して、航海士に雷落とされてたくらいだ。
「あー…。取り敢えず、此処は俺とリンゴの担当なんでねい。」
続けて『さっさと帰りやがれ。』と聞こえてきた気がしたんですが、マルコ隊長。
爽やかな笑顔が怖いです、マルコ隊長。
そんな笑顔を向けられた先輩達は『はいィィっ!』と裏返った声で、本当に帰って行くし。
「…サッチ隊長脅してまで操舵室に来たんですか?」
そう言うと、プイッとマルコ隊長は外方を向いた。
いやいや、そんな事して可愛いと思うのは恋人の私だけだぞ。
はぁと溜め息を吐いてから、マルコ隊長へと視線を向けた。
「サッチ隊長に我が儘言ってまで、私に用でも有りましたか?」
「…最近、やたらと海軍と鉢合わせたり、勘違いルーキーの襲撃ばっかだったろい?」
「あぁ、そうでしたね。それで?」
「…っっ!」
何故、言葉に詰まる。
…ん?耳がほんのりと赤く…。
「…寂しかったんだよい。」
リンゴと一緒の時間が無くて、寂しかったんだい。
もしも愛する恋人に、そんな事言われて冷静でいれる人が居るなら、切実に教えて欲しい。
でも、我が儘は程々に。「今度、サッチ隊長に何かお礼しないと…。」
「別に要らねェだろい。」
「…(サッチ隊長、ごめんなさい)。」fin.