TRiP

□完全なる危険フラグ
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Side-M






今日は昨日と違って天気が良い。


太陽が燦々と輝くが、日差しが強いって訳でもねェ。

風も強くは無いが弱くも無く、まさに順風満帆だ。





…突然の来客を除けば、だ。





「グララララ!てめェの面ァ見るのは久し振りなモンだ、赤髪小僧が。」

「あァ、確かになァ。このモビー・ディック号の上に立つと見習い時代を思い出す…良い酒を持参した、戦闘の意志は無い。」

「グララララァッッ!!毎回毎回覇気剥き出しの奴がよく言うモンじゃねェかっ!」



親父…我等が船長・白ひげが愉快そうに笑い声を上げた。

その様子を眺めながら、横目でチラリと甲板を見渡すと…。



情けなく気絶した男の残骸の山が出来ていた。



毎回毎回、覇気剥き出しにしやがって。

後片付けが大変ったら無ェ。


小さく溜め息を吐いて、辛うじて気絶するのを免れた隊員に顎で指示を出すと、それを受けた隊員達が、気絶した奴等を船室に運び始めた。


やっと甲板の掃除が完了した頃には、他の船から隊長達が集まり、(一応)客人である赤髪のシャンクスを囲む様にして立ち並ぶ。


「囲まれるんなら女の方が嬉しいんだがな。…分かるだろ?四番隊隊長サッチ、だったか?」

「そ、正解。女に囲われたい気持ちも分かるぜ。俺だって男に囲まれたかねェよ。」

「だったら止めてくれ。」

「それは無理。」


サッチがそうあっさり切り捨てると、赤髪は苦笑した。


そう言いながら、たった一本の右腕に担ぎ上げていた馬鹿デカい酒瓶を親父の前にゴトリと置く。

それに目もくれずに真っ直ぐに赤髪を見据える親父に、俺も含めた隊長等に緊張が走った。



「今、俺達が拠点にしている春島名産の名酒だ。」

味は俺が保証しよう。



そう言って自身の目の前の盃に酒を注ぎ、残りを親父へと手渡す。

それを黙って受け取り、瓶に口を付けた親父の口元が緩んだのを、俺は見落とさなかった。



「中々良い酒じゃアねェか!グララララッ!」



…取り敢えず、俺等がこの赤い髪の男を警戒する必要は無くなったらしい。

それが分かって、隊長等は散り散りに分かれ、親父と赤髪の両脇に並んだ。


俺も同じく図体のデカいジョズに隠れる様にして移動したんだが。

この男は、そういえば中々目ざとい奴だった。



「おっ!一番隊隊長のマルコだな!お前ウチの船に来ないか?」

「五月蝿ェよい!」



毎度恒例の勧誘をバッサリ切り捨てて、親父の直ぐ横の欄干に腰を掛けて、怠そうに様子を伺うと。

赤髪の野郎は『ツレねェなァ。』とヘラヘラ笑って、親父へと再度視線を向けた。



「拠点を変える事になってな、ログポースを辿ると白ひげ…アンタの縄張りの島にどうしても着港しなきゃアならねェんだ。」

「グララララ。好きにすりゃア良いじゃねェか、ハナタレ小僧が。」

「まァ、寄るだけだ。荒らすつもりは無い…戦争するつもりもねェからな。」

「グラララララッ!んな事してみやがれ…容赦しねェ。」

「戦闘の意志は無いさ、白ひげ。」



親父の縄張りなど勝手に寄りゃア良い話なのだが…わざわざ許可を貰いに、一人敵船に乗り込むこの男は、相変わらず一々律儀な所がある。

敵ではあるのだが、親父と肩を並べる男なだけに、多少好感を持てる。

この律儀さを切実に見習ってほしいモンだ…どっかの四番隊隊長に。


「取り敢えず報告はした。…で、奴等は何なんだ?白ひげ。」

「俺の息子じゃアねェ。お前ェんトコのじゃねェのか?」

「いや、知らねェマークだな。」


二人が話しているそれには、随分前から全員が気付いていた。

赤髪が戦う意志が無いと言いながら実は援軍を…なんて卑怯な手段取る男じゃねェのは知っちゃアいたが。

念には念を、と全員して武器に手を添えていたのだが、それは杞憂に終わった様だ。


…何故なら。





「縄張りに足を踏み入れる許可を貰った礼に、俺が潰して来よう。」

最近は喧嘩相手がいなかったからな。

マルコも来るか?





此方に視線を向けながら言う奴の顔は。

流石、大海賊…とでも言うのだろうか?





最高にイイ笑顔をしていた。





まァ、俺も最近は事務処理ばかりで体が鈍ってたトコだ。

売られた喧嘩、買ってやろうじゃアねェか。





親父がグララララと盛大に笑いながらの『行ってこい。』という台詞と。

遠くから此方に向かって放たれた砲撃音が聞こえた瞬間。


俺は両腕に青い炎を宿して。

獣化した足で赤髪の両肩を引っ掴んで。


一直線に喧嘩を買いに、飛び出した。
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