SeRieS
□残酷な人
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気付くとマルコはいつも、海を静かに眺めてるんだ。
残酷な人「なァ、マルコってさ、よくああやってるよな。」
「ん?…あー、そういや五年位前から、ああだな。」
目元の傷を痛そうに歪ませて、サッチは話題の彼に目を向けた。
勿論、大分昔に付いた傷に痛みは無い。
つまりは、その痛みはマルコに対して、だ。
「何っつーか、複雑な目ェしてんだよなー…。」
普段寝てるか食べてるかの末っ子だが、こういうのに関してはいやに鋭い。
実際、ただただ海を静かに映すマルコの瞳は複雑そのものである。
愛しそうに、幸せそうに。
悲しそうに、辛そうに。
相反する感情を宿す瞳は、話し掛ける事すら戸惑われる位に儚くさえ感じられるのだ。
「まァ、誰も理由は知らねェんだ。親父にさえ言わねェ位だったからな。」
「…おれ、聞いてくる。」
「…は?ちょっ、エース!??」
サッチの制止も虚しく、突風の如くマルコの元へとエースは向かった。
しかし、あと数歩という所でピタリと足は止まった。
“…独りにしてくれって、言ってるみてェだ。”
マルコの背中は、そう切々と言葉を発していた。
話し掛けても良いものかと戸惑うエースの隣に、ゆっくりと歩いて来たサッチが並ぶ。
そして、二人揃ってただただマルコの背中を見つめた。
端から見ればそれはまるで、マルコに熱い視線を送っているかの様な異様さが有り、周りにいた船員達は顔を引きつらせながら距離を取り始めた。
“いや、俺も男見つめる趣味ねェっての。”
サッチが内心苦笑を漏らすと、ふいっとマルコが振り向いた。