ReVeRSe

□便利システム
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あのまま俺も寝ちまっていたらしく、目が覚めるとカーテンを閉め切ってたのもあって辺りは暗くなっていた。

薄らと見える置時計の針は、夕方も過ぎた頃を示している。
くァっと一つ欠伸をして隣を見れば、未だすやすやと俺の腕を枕にして寝息を立てているリンゴの寝顔が目に入った。



思わず緩む口元のまま、リンゴの顔にキスの雨を降らせていると、「んっ……」と少しだけ身を捩らせたリンゴは少しずつ目を開けていく。


「もう夕方だよい、リンゴ。」
「……ん。」
「ユキメさんとミチノク帰って来ちまうよい。」
「ん、んぅ………………はっ!!!!」


両親の名前を出せば一気に覚醒したらしく、ガバッと起き上がったリンゴは二人揃って裸のままだと気付いて、直ぐに布団に包まった。

それに、また笑って。


「隠さなくたって良いだろい。」
「いや、それは、恥ずかしいと言いますか………。」
「恥ずかしいも何もじっくり隅々まで見「ストォォォォォォオオオップッッッッッッ!!!!!!」…何だよい。」
「ハッキリ言わないで……っっ!!!!恥ずかし死にするからっっっ!!!!!!」


…………だから、恥ずかし死にって何だ。
そう思いながらも、恥ずかしそうに身体を隠す姿は……まァ、中々に腰にクるモンがある。



………と言っても、流石にもう一回戦抱くには時間的に厳しい。

多分、この状況をミチノクに見られたら殺される自信がある。
不死鳥の能力だから殺されても死なねェのは知ってるが、何故か殺されそうな気がする。
それこそ頭の良いミチノクの事だから、真顔で大量の塩水ぶっ掛けてからナイフで心臓一突きして殺してきそうな気がする。

……その光景を想像したら、背筋に薄ら寒いモンが走った。
もしかしたら、三大将に囲まれるより怖ェかもしれねェな。


「さっさと服着ろい。」
「着る!着るからっ!!そっち向いててっっ!!!!」
「……別に見たって良「良くないのぉぉぉぉぉっっ!!!!そこは恥じらわせてぇぇぇぇっっ!!!!」……よい。」


乙女の恥じらいってヤツか…………乙女って歳でもねェだろうに、と失礼な事を思いながらリンゴに背を向けて、俺も床に散らばった服を拾って身に付けていく。

二人揃って服を着終わって居間へと降りていけば、デンワ(この世界の電伝虫をそう呼ぶらしい)がピカピカと赤く点滅していた。


「デンワ光ってるよい。」
「ん?あ、留守電だ。」
「『ルスデン』って何だい?」
「留守番電話っていって、留守の時に相手の伝言を録音しておいてくれるの。」
「へェ………便利だな。」


そういう生態の電伝虫いねェかな。
いや、船にゃア通信士が常にいるから別にいらねェか。
恐らく一般家庭なら便利なんだろうな……一般家庭ってモンは知らねェが。

そんな事を思っていたら、その『ルスデン』からユキメさんの声が聞こえた。


《あ、林檎?陸奥と泊まってくるからマルコさんと頑張るのよー。……ガチャッ…ツーツーツー……メッセージの再生を終了します。》


……………凄ェ母親だな、おい。

チラリとリンゴを見れば、諦め切ってるような遠い目をしている。
コイツの現実逃避癖はこうやって出来てったのか……と変に納得しちまった。


「……取り敢えず、飯どうするよい?」
「あれ?パイナップ「あ"ァ"ん?何だって?よく聞こえねェなァ。」すみません何でも御座いません大変失礼しましたマルコ様。」
「………で、どうする?俺ァ料理なんざサバイバル飯しか作れねェぞい。」
「寧ろサバイバル飯とか何それ凄い食べてみたい…っっ!!!!」
「ンじゃア、適当に蛇やら鼠やら獣捕ま「いや、やっぱり良いです普通のご飯食べたいです。」……よい。」


だがしかし、俺の記憶じゃア確かリンゴは料理苦手じゃなかったか?

それが伝わったのか、そっと視線を外すリンゴに。
さて、どうしたモンか………と思ったら。


「あ!出前!!出前取ろう!!」
「『デマエ』?」
「ご飯屋さんがご飯を届けてくれる最高に素敵なシステムなんだぜ………っっ!!!!」
「まァ、確かに良いシステムだな。」


海の上でもやってくれンなら、是非俺の世界でも取り入れて欲しいが……普通に考えて無理だな。
現実的に考えて、東の海にあるって聞くレストラン船が限界だろう。



それよりも、女として炊事出来なくて良いのか?
コイツは嫁に行くつもりはあるんだろうか?
いや、何処の馬の骨とも知らねェ男に嫁ぐなんざ認めねェが。

寧ろ、白ひげ海賊団に来ちまえば炊事はサッチを筆頭としたコックの多い四番隊がやってくれんだし。
うちに来ちまえば良いのに、と本気で思う。


「ピザ食べよう!ピザ!!私四種のチーズで!!」
「あー………ンじゃア、俺はこのスパイシーチキンとかいうのが食べてェ。」
「よし!あとはシーザーサラダ付けて、ポテトも付けよう!」


適当にあれこれ付け足したリンゴは、デンワを取ってデマエの注文を(多分)している。



……それにしても、本当にデマエっての便利だな。
戻ったらモビーディック号でも厨房に電伝虫置いてみるか。
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