ReVeRSe

□魔王は世界共通
1ページ/1ページ

「いや、あの、えっと……。」

「ねぇ林檎、お父さんはな何もお前を責めてる訳じゃ無いんだ。マルコの事も責めてない…いや、責めてるマルコは責めるうちの娘何で海賊船に乗せてんの?マルコが海賊なってたのはどうでもいいけど何うちの娘巻き込んでんの?ねぇ?」

「いや、あのね、寧ろ私が助けて貰ったといいま「林檎は黙ってっっっっ!!!!」………ハイ。」

「はい……じゃねェだろうがよいっっ!!リンゴっっっっ!!!!」

「ハヒィィィィッッッッ!!!!すいま「うちの娘に何怒鳴ってんだぁぁぁぁああああっっっっ!!!!」

「お前ェもついさっき怒鳴ってたじゃねェかよいっっっっ!!!!」



オボンとかいう行事みてェのでやっとリンゴと再会出来たと思ったら、再会の喜びやら俺がこの世界にいる事の驚きやら…そんなモンをかっ飛ばして娘に詰め寄ったワイズマンのお陰で、こんなやり取りが小一時間ほどずっと続いている。

どうやら現状打破の最後の砦だと期待していたリンゴも、父親であるワイズマンには敵わないらしい。

というか、ワイズマンが見事に聞く耳持たずというか何というか……本当にコイツがあの賢く聡明だった少年の成長した姿なのか?と首を傾げ過ぎて一回転ぐらいしそうな気分だ。


リンゴが人攫い稼業にも手を出していた海賊に捕まったのを俺(…一応赤髪もいたが名前出したら出したで面倒臭ェから省く)が助けたと説明すれば、うちの娘を攫わせたのかっ?!と言われ、いやいやいや攫われてたのを偶然助けたんだと言えば何あっさり攫われてんの?無能なの?と言われ…。

俺の米神に青筋が立ってるのをひしひしと感じていると、それに恐怖したリンゴが助け舟を出してくれてやっと安心しようとしたら、どうやらワイズマンの目も大分据わっていたらしくリンゴも強く出れず……。

つまり、とてつもなくワイズマンが面倒臭ェ。

何とかしろと何度もリンゴに視線を送るが、その度に顔を青くさせてそっと視線を外されて、そこからワイズマンに娘を睨むなやら色目使うなやら言い掛かりを付けられる始末。
こんな面倒臭ェ野郎なんざ初めて見た……と思ったが、赤髪の野郎もなかなかに面倒臭ェ野郎だったのを思い出して、さてどっちの方が面倒臭ェ野郎かなどと思い始めてる俺はどうやら現実逃避をしているらしい。

……現実逃避もしたくなる、仕方ねェ。
そう、仕方ねェんだ。



「…………ああぁぁぁああっっっっ!!!!いい加減にしろよいっ!ワイズマンっっ!!話進まねェだろうがっっっっ!!!!」
「マルコに怒鳴られたって怖くないからね。」
「ちょっ………!!お父さんっっ………!!!!」
「リンゴも何とかしろよい!!!!お前ェの親父だろうが!!!!!」
「はひぃぃぃいいいいいいっっっっ!!!!お父さん落ち着い「林檎を怒鳴るなぁぁぁぁああああっっっっ!!!!!!」………あ、あの………。」


おろおろとし始めたリンゴに口論が激化する俺とワイズマンの姿は、傍から見たら滑稽だろうか。
いや、ここはワイズマンの家だから今は俺とリンゴとワイズマンの三人しかいねェから滑稽も何もあったモンじゃねェな。

もう面倒臭ェから一発蹴り飛ばしてやろうかと右足を動かそうとしたその時。







「あら?何騒いでるの?陸奥、林檎?」
「あ、お母さん。おかえり。」
「ただいま、林檎。それで陸奥…これはどういう「あああああああの雪姫苺さん???!!!!!りょりょりょ旅行じゃあなななななかったのかかかかいいいいい!!????」…つまらないからさっさと帰ってきたけど、何事かしら………?」


……………髪の黒いメアリがいる………否、閻魔大王みてェな女がいる。
いや、違う。
菩薩みてェな穏やかな笑顔の壮年の女の背後に大魔王が見える。

って………お母さん………?


「………アンタ、リンゴのお袋さんかい?」
「えぇ、初めまして。林檎の母で陸奥の妻の杜ノ宮雪姫苺よ。」
「あ、あァ……俺ァ、マルコだ。」
「そう、マルコさんね?………それで、陸奥……。」
「はははははははいいいいいいいいいいいっっっっ!!!!!!!!」


さっきまでの勢いは何だったのか、ワイズマン…本名はミチノクらしいが、ミチノクは今や冷や汗ダラダラで顔面蒼白である。

……あ、面白ェ顔してんな。

そんな思いも次の瞬間には簡単に掻き消された。


「あんたぁ客人来てるってぇのに何してんだ?あ"あ"ぁ"ぁ"ん?!!!!」
「はひぃぃぃいいいいいいっっっっ!!!!」


あァ、般若がいる………いや、夜叉か?鬼?親父さえも顔背けちまいそうだな。
そんな事をふと思う俺の口元は痙攣したようにヒクヒクしている。
ありゃア本気でメアリやマリーと良い勝負だ。

するとホッとしたような疲れたような顔したリンゴが俺の隣にとぼとぼ歩いて来たモンだから、取り敢えず頭に浮かんだ質問を一つ。


「リンゴ………お前ェのお袋さんは何者だい?」
「ん?あぁ、お母さんは…あー…マルコさんの世界でいう元海賊みたいな?陸の男に惚れて船を降りた的な?」


そのリンゴの言葉に思わず深く頷きを返していると、ミチノクの甲高い叫び声が響き渡った。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ