ReVeRSe

□過保護な親父
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膝を付いたワイズマンを慰めて励まして、暫く家にいると良いよとフラフラ帰宅する彼の後ろ姿に不安を覚え。

俺の世界に来た当初に現実逃避しまくっていたリンゴの気持ちが少し分かった気がした。



違う世界に来ちまって焦ってる俺が、何故この世界の人間を心配しなければいけないんだと切実に愚痴りたい。


もしくはサッチかエース辺りがいてくれれば、思い切りケツ蹴飛ばしてやれるんだが……。


残念ながら目の前のワイズマンは頭はかなり良かったが、確か俺の記憶の中では運動神経なんてモンは無かったような気がする。


寧ろ、恐らくこれから世話になるだろうワイズマンを、思い切り蹴り飛ばす程の鬼畜さは持ってねェ。

その結果、俺の気持ちとは裏腹に不安ゲージなんてモンは綺麗に右肩上がりしていく。


「あ、そうだ。マルコ、シャツは前閉めろよ。」
「あ"?何でだよい?」
「はいはい、凄んでも恐くありませぇえん。まぁ露出したいならしても良いけど、露出狂の変態って思わせて貰うよ。」
「……閉めりゃア良いんだろい。」


チッと舌打ちが出たが、子供ン時もこんな感じでやり取りしてたなァ…なんて思えば懐かしさが込み上げる。

何やら話を聞けば、こっちの世界では腕や足以外の肌を出すのを良しとしないらしく、そんな事をしたら露出狂の変態扱いされ、民間人がケーサツという海兵みてェなのに通報しちまうらしい。

…それ言ったら、エースなんて完全変態になるじゃねェか。

面倒臭ェなと思ったが、よくよくちゃんと思い返せば船じゃ半裸や半裸に近い男が大勢いた筈だ。



何だかとてもリンゴに申し訳ねェような気持ちになるのと同時に、もしかしたら俺ァ変態だと思われてたのかもしれねェと若干血の気が引く。


いやでも、しかし。

キスした時に抵抗されなかった訳で、好意は持たれてる筈だ。

……急すぎて抵抗する暇も無かったという考えも芽生えたが、そいつは頭から消そうと都合良く考えとこう、うん。


それよりも。


「…そういやリンゴは仕事してんのかい。」
「え?何うちの娘呼び捨てしてんの?は?誰の許可得て呼び捨て?いくら君でも許さないよ?ねぇ?勿論だけど、うちの娘に手なんて出してないよね?寧ろ海賊船に乗ってたってどういう事?ねぇ?ねェ?」


………コイツ、マジで面倒臭ェ。

いや、何でもかんでも疑問に思うからこその頭の良さだとは知ってるが、リンゴが絡むと余計面倒臭ェ上に話が進まねェ。

こいつはもうリンゴに直接会うのが一番手っ取り早そうだな。


「そんでリンゴはどこに「何呼び捨ててんの?林檎さんね。」……リンゴサンはどちらだい?」
「あぁ、林檎は都会で一人暮らししてるよ。この辺りは田舎だからね。」
「…その都会とやらは遠いのかい?」
「え?何?行こうとしてるの?今言ったよね?一人暮らししてるって言ったよね?女の一人暮らしの部屋に行くの?ねぇ、マルコ行くの?そんな女癖悪かったっけ?…あぁ、女癖悪かったの忘れてたよ。」


……否定出来ねェのが何故だか凄く悔しいが、そういやこっちの世界は恋人以外の異性と関係持つのは余りよろしくないとかって話だったような……いや、俺ァこっちの世界の人間じゃねェから構わねェ……と言いたいとこだが、リンゴはこっちの世界の人間だから気にしちまうっちゃあ気にしちまうのは否めねェ。

…っつーか、もう取り敢えずワイズマンが面倒臭ェな。


久方振りの友人の再会を喜んださっきまでの俺を殴りたいが、ワイズマン曰く明日から『オボン』という時期がやって来て、その『オボン』にはリンゴの職場が休みになるから、明日の昼頃にはこっちにリンゴが来るらしい。






『オボン』ってのが何かは知らねェが。

取り敢えず、リンゴさっさと帰って来てくれ、マジでコレは頼む。
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