ReVeRSe

□君を求めて
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リンゴが消えてから早一ヶ月。


部屋もバーカウンターも未だにそのまま姿を残している。





埃積もる前にサッチがバーカウンターを綺麗に掃除して。

リンゴが使っていた部屋はナース共が掃除していた。





全員がリンゴは元の世界に戻れたんだな、良かったなと思いつつ、勿論全員が少なからず寂しさも覚えてて。

その中でも、どうやら一番寂しがっていたのはサッチ曰く俺らしい。








そうは言っても、俺達ァ白ひげ海賊団だ。

リンゴがいなくなったからと言って、各自仕事が無くなる訳でもねェし、戦闘が始まれば血だって簡単に騒ぐ。

戦闘に勝てば敵船から宝も酒も手に入り、そこから宴が始まっちまえば全員が飲み食い騒ぎ、中には歌って踊り出す野郎も出てくる。



リンゴがいねェのには慣れてきたが、酒を飲んでるとつい初めてリンゴが作ってくれたモヒートを思い出して、無意識に探しちまうのはどうしたらいいのか。









あの日、初めて口付けて。

本当に唇を触れ合わせるだけの口付けに、身体中満たされちまうかのような幸福感に包まれて甲板の宴会に戻った俺は、その高揚したテンションでジョズとビスタと酒を煽り続け、気付いたらそのまま甲板で寝ちまっていた。

甲板で雑魚寝なんざ何年振りか?なんて苦笑しながら、酒焼けした喉に水でも流し込もうと食堂に向かえば二日酔いで顔色の悪ィサッチがキッチンで朝飯を用意していた。


「サッチ、水。」
「あ"ぁ"?!!」
「…何だよい。」
「野郎はセルフだ!セルフ!!自分で汲みやがれェっっ!!!!」


相当二日酔いが酷いらしく珍しく目が据わったサッチに、いつもなら蹴り飛ばすかリーゼントもぎ取ってやるとこだが、まず今日はリーゼントじゃねェし、蹴り飛ばしたら蹴り飛ばしたで冗談で済まずにマジな喧嘩になっちまうのが容易に分かった。

一つ溜息吐いてキッチンに入り、グラスを探して水を入れるついでにサッチの分も用意してやれば。

少しだけ目を和らげて『おォ、サンキュ』と言って一気に水を煽ぐサッチ同様、俺も水を一気に喉に流し込むと張り付いた喉が潤っていく。

喉が潤ったとこでサッチに何気に朝が弱ェリンゴを起こして来いよと言われたモンだから、特に断る理由もねェしリンゴの部屋へと向かった。

そん時ァ昨晩の事を思い出して口元が緩みそうになったが。

すぐに口元だけじゃなく、目元まで引き締まる事になるとは、な。


















それからは船員全員で船内を隈無くリンゴを探し回った。

ナミュールを先頭に何人も海ん中飛び込んで探し回った。


だが、リンゴは何処にもいなくて、それを親父に伝えれば。

『そうか…帰っちまったか…。』

少し寂しそうに笑って言った親父の一言に、頭の何処かで気付いてたが信じたくねェ想いは、簡単に打ち砕かれちまった。



















それ以降暫くは、年甲斐もなく荒れちまった俺を、親父も家族もみんな責めやしねェで見守っていたモンだが。

流石にずっとそうしてる訳もいかねェと、白ひげ海賊団を纏め上げる一番隊隊長の肩書きを無理矢理呼び覚まして、やっと落ち着きを取り戻してから既に一週間。


それでもふとした時に、リンゴの姿を探しちまう俺は何ともまァ情けねェ男だろう。


「おーい、マルコォ!」
「………何だよい、サッチ。」
「何っっ?!!その不機嫌オーラ全開??!!!話し掛けただけじゃねェかっっ??!!!」
「………。」
「ちょっっっ!!!!無視かよっっ!!!!??????」


マルコ隊長ォ怖ァい!なんて気持ち悪ィ声出しやがって…蹴り飛ばすぞと思っていたら、どうやら今夜の不寝番の奴が体調崩したらしく、俺に代われねェかとの話だった。

屈強がウリの海賊が体調崩した事に眉を顰めちまったが、今朝寝惚けたエースの馬鹿が海に落ちたのを助けた俺んとこの隊員が、ついでに風邪をこじらせたらしい。

それなら元凶のエースの馬鹿にやらせりゃア良いじゃねェかと思ったが。


「あァ、そういや今日二番隊は外輪シップで遠征かい。」
「そうそう。今夜空いてんの一番隊だけだろ?まァ、マルコが無理なら他の隊員でもいいんだけどよ。」
「……今日不寝番以外の隊員は一日休みだからねい、仕方ねェ。俺がやるよい。」


そう返せばサッチは悪ィなと少し申し訳なさそうに両手を合わせた。

まァ、四番隊は朝飯の仕込みやらで朝が早ェから不寝番は免除されてるし、そもそも今日の不寝番は元々一番隊の仕事だったんだ。

別に構わねェよいと笑えばサッチも笑って、多分晩飯の準備だろう、船内へと戻っていった。


「さァて、不寝番ならちょいと仮眠でも取るかねェ…。」


そう思って俺も自室へ向かう為に船内へと戻ったのだが。



















これが、幸か不幸か。

恐らく、夢を望んじまったであろう俺は、最高で最悪な夢を見る事になる。
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