TRiP

□朝ご飯タイム
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衝撃的な朝を迎えて。

二日酔いの頭痛を感じながら。

ちびマルコと一緒に食堂へと向かうと、朝食を取っている人は疎らだった。


それに首を傾げていると、『おはよう!リンゴちゃん!』とサッチさんが明るく話し掛けてくれた。



因みに、一緒に来ていたパイナッ…いや、ちびマルコは既に席に着いて朝食を怠そうに食べている。



いつの間に…。

流石、パイナップル・オブ・ザ・ちびマルコ。




「ほら、リンゴちゃんも好きなの取って食べな!」

「え?あ、うん。」


そうサッチさんに言われて、目の前に広がる恐らくバイキング形式の料理に、目を丸くした。

朝っぱらなのに誰が食べるんだ(…いや、皆食べてるんだが)という様な肉や。

カラフルで『着色料入りですか?』と聞きたくなる様な野菜。

どうやって釣って、どうやって捌いたのかも疑問な魚。

色とりどりでちびマルコ(の頭)が交ざっても、何ら違和感の無い果物。


それ等が大量に、所狭しと並んでいた。


取り敢えず私は、妥当なご飯と魚とスープを取って、何処に座ろうかと食堂を見渡していると。

ブンブンと手を振っている、間違った『えすこーと』をしている男と目が合った。


「おいリンゴ!一緒に食おうぜ!」

「エース君!」


他の船員より歳が近いのもあって、私は迷う事なくエース君の元へと向かう。

空いていたエース君の向かいに腰を落ち着けて、まずは一番の疑問を投げ掛ける事にした。


「それさ…全部食べるの?」

「あァ!リンゴはそれっぽっちで良いのかよ?」

「え…あ、うん。」


さて、どうツッコもうか。


『朝からそんなに食えるかいっ!』が良いだろうか?

『胃がモタれるわいっ!』が良いだろうか?

『お前さんの胃はブラックホールかっ!』が良いだろうか?


まぁ、何言っても無駄な気がするので。


「私の世界はこの位が標準だから。」

「そうなのか?少食な奴が多いんだな。」


君が大食漢なだけだ。

そう思いながら、箸を持って両手を合わせて頂きますをする。


これは母親に『頂きますとご馳走様位、ちゃんと言いなさい!』と小さい頃から言われた事で身に付けた習慣だ。

うん、当たり前の事。

当たり前の事、なんだが…。



「リンゴちゃん…随分と行儀良いんだな。」



エース君の隣に座ろうとしていたサッチさんがフリーズしてから放った一言。

静まり返った食堂で、全員がそれに頷く。

直角お辞儀のエース君までもが口をポカンと開けて、口の中に収まっていた食べ物をボロッと落とす。

…エース君、行儀悪いってか汚いぞ。



「彼方の世界ってのァ、随分と良い子ちゃんが多いんだねい。」



離れた席にいた筈のちびマルコが、手にトレイを持って。

有ろう事か、私の隣に着席した。





そして、更に有ろう事か。

私の頭を柔々と撫で出した。





「偉いもんだい。」





良い子良い子と。

そんな感じで優しく頭を撫でてくるちびマルコに。

その大きくて暖かい手の平の感覚に。





私は顔を真っ赤にさせて。

俯いてしまった。
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