TRiP

□目覚めたら、其処には
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あの後、メアリさん達にとことん酒を煽られて。

酒に弱い私は、勿論すぐに潰れてしまった。




…筈だ。




朝になって目が覚めて。


まず布団の中にいた事に思考が一時停止。

目の前に肌色と青色のコントラストの綺麗な逞しい胸板が広がっている事に、再び思考が一時停止。



そして、自分が温もりに包まれている事と、体が動かない事に気付いて顔を上げて、思考が永久停止しかけた。





…目の前に、パイナップルが生えている。





パイナップルじゃねええぇぇぇええっっっ!!

パイナップルだけどパイナップルじゃねええぇぇぇええっっっ!!


え?待てコラ何だこの状況。



よし、もう一度ちゃんと整理するんだ林檎。

焦るな落ち着け。

『Be cool.』だ私。




まず、メアリさん達に酒を(無理矢理)飲まされて。

『もう駄目だぁ…。』となって。




…どうなった?




あれ?その後どうなったの私!?


「…んっ…。」


パイナップルが身じろいだかと思いきや、ギュッと抱き締められた。





思考永久停止致します。

グッバイ・マイ・ライフ。





さらば我が人生じゃねええぇぇぇええっっっ!!


腕枕された挙げ句、腰にも手を回されてるもんだから。

密着度が半端無いです。

マジ勘弁して下さいパイナップル。




…何でパイナップルって呼んでんのかって?

認めたくないんだよっっっっ!!!!





「…起きてたのかい、リンゴ?」





その擦れた低音激甘ヴォイスやめろおおぉぉぉぉぉぉおっっっっっっっ!!!!

胸キュンしちゃうじゃないか!

南国果実相手に胸キュンしちゃうじゃないか!



「昨日は大変だったよい…。」

「…え?私めは何をしでかしたんで御座いましょうか…?」

「何を…?まァ、ナニを…だねい。」



ニヤリと笑う目の前のパイナップル・オブ・ザ・ちびマルコ。



う、ううう嘘だぁぁぁぁぁああああっっっっっ!!!!


パイナップルとナニしたの!?私!!???

果物とナニしちゃったの?!私!!???





「…あんなに激しいとは、意外だったよい。」





いやぁぁぁぁぁああああっっっっっ!!!!




一人で愕然としていると、ちびマルコは喉でクツリと笑って。


「冗談だよい、リンゴ。」

「心臓に悪過ぎるわっっっっ!!!!」


そう叫ぶ様にして返すと、ちびマルコは少し五月蝿そうに顔を顰めたが、直ぐにクツクツと楽しそうに笑った。





「やァっと普通にしてくれたねい。」

俺にだけビクつきやがってよい。





そう嬉しそうに言われた。



何やらちびマルコは。

エース君やサッチさん達に対しては普通に接するのに、自分に対してだけ怖がる私が気に食わなかったらしい。



いや、だってさ…。



「…貴方沈めるとか言いませんでした?」

「ん?あァ、あん時かい。そりゃァ敵船にいたからな、多少警戒はするだろうよい。」

「多少!?」

「本気で警戒してたら問答無用で沈めてるよい。」



笑顔で言いやがったぁぁぁぁぁああああっっっっっ!!!!

それ、サラリと言う台詞じゃありませんよ貴方。



楽しそうに笑いながら腰に回していた腕を退かしてくれたちびマルコは、それでも身動きしない私を見て。





「何だい?そんなに俺に抱かれてェのかい。」





そう言って思い切り抱き締めながら鼻先をくっ付けてきた。





喰 わ れ る !!!!





「いいい、いいいいえだだだだだ大丈夫ですすすっっっっ!!!!」

「クックックッ…。」


こいつ絶対Sだ…っっっ!!





その後、二人してベッドから起き上がると其処は見た事の無い部屋で。

私が首を傾げていると、ちびマルコは『此処は俺の部屋だよい。』と言った。



何やら昨夜、潰れた私を部屋に連れて行こうと抱き上げて歩いていると。

途中、私がちびマルコの服をガッシリ掴んでいる事に気付いて。

指を離そうとしても離れないもんだから、諦めて自分の部屋に連れて来ただけらしい。


「…良かった何も無くて。」

「…別にナニかあっても俺は構わねェがな。」


今回の航海は長かったからねい。





そう言ったちびマルコの言葉の意味を。

この時の私は知らなかった。





寧ろ、その言葉の意味を勘違いして。

不覚にも、胸をトクリと高鳴らせてしまっていたんだ。
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