TRiP
□説明って難しい
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『あれは何?』
『これは何?』
親戚の小さな子が何でもかんでも尋ねてくるのに、困った事がある。
分かってはいるが、説明出来ない事は多く存在する。
それを今、私は痛感しています。
「『たいへいよう』って何だ?」
「何って、海です。」
「海を『たいへいよう』って呼ぶのか?」
「いや…世界三大洋の一つが太平洋と呼ばれてるんです。」
「ん?『たいへいよう』が三つも有んのか?」
「いえ…あの…。」
エース君の言葉に詰まっていると、周りでは…。
「その『たいへいよう』が世界の海なんじゃねェか?」
「あァ、レッドラインみてェに大陸で三等分されてんだ、きっと。」
「その大陸が『ゆーらしあ大陸』なのか!」
「でもよ、三等分とかややこしくねェ?東西南北じゃなくて、方角も三方向しかねェんじゃね?」
「ややこしいな。」
お前等がややこしいわ。
私とエース君と(何故かいる)ちびマルコで話していたら、わらわらと周りに人が集まって、気付くと流れで私の世界の話になったんだが。
“理解力低いんじゃないの?”
そう思わずにはいられないくらいに、切り刻む勢いで細かく説明しなければいけない。
…私の説明力の無さは、この際棚に上げよう。
「世界に大洋が三つあって、その内の一つがその『たいへいよう』なんだろい?」
いや、たった一人だけ理解力に優れてる奴がいた!
ちびマルコ…初めて君に尊敬心を抱いたよ。
だから、その眉間の皺を消してくれ頼むから。
「そ、そそ、そうです!」
「…あとの二つは何てェんだい?」
だから、その皺を消せ。
目元口元の皺はオッサンだから仕方ないが、眉間の皺は歳のせいには出来ないぞ。
若くても眉間に皺は出来るんだぞ、不機嫌の名の下に。
「リンゴ…何でかは知らねェが、腹が立つのは何でかねい?」
「いえそんな腹が立つだなんて気のせいですよ間違いなく気のせいです。」
「…で?残りの二つは何だよい?」
「大西洋とインド洋で御座いますマルコ隊長様。」
「…あァ、そうかい。」
だから何で不機嫌なんだ?
泣くぞこの野郎。
良いのか?マジで泣いてやるぞ!?
「へェー…んで、さっきリンゴちゃんが言ってた海賊で有名な『かりぶ海』は何処なんだ?」
サッチさんが顎髭を撫でながら、そう聞いてきた。
ちなみに、ぐしゃりと潰されたリーゼントは、今じゃ跡形も無く下ろされている。
そっちの方が格好良いですよ、と言っても大丈夫ですか?
駄目ですよねそうですよね知ってますよ。
「カリブ海は…東インド諸島なので…大西洋の左端、ですかね。」
もう言葉での説明が面倒になってきたから、適当な紙とペンをお借りして、簡単に世界地図を書くと。
「リンゴ、君は地図を書けるのか?」
口髭とシルクハットが素敵なジェントルマンのビスタさんに感心された。
ちょっと胸毛が濃い気がするが、まぁ目を瞑ろう…ジェントルマンだしな!
「何だい、お前ェさん航海士かい?」
着物と歌舞伎みたいな髪型とうっすら引かれた紅が素敵ですが、勘違いも甚だしいのはイゾウさんだ。
「いや…誰でも一度は世界地図見た事ありますし…。」
「お前ェさんの世界は船乗りが多いのか?リンゴ。」
違います。
寧ろ少ないです。
大抵の人は陸で過ごすのが当たり前です。
あんた等海賊の価値観を押し付けちゃいけませんよ?イゾウさん。
「知識として学校で全員が学びます。」
「『がっこう』って何だ?」
またもやエース君からの質問。
…まだまだ質問攻めは続くらしい。
エース君、皆さん…。
私の歓迎の宴の筈なのに。
主役の私、お酒二口しか飲めてないのですが?