SeRieS

□レッツ・ハンティング
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《こちらL1。L4応答しろい。》
「はいはーい、こちらL4ー。」
《ターゲットは見付かったかよい?》
「L2が接触したらしいぜ?」
《おいおい、大丈夫かよい……。》
「偽名で名乗ったらバレなかったってさ。それより、L1。」
《………何だよい。》
「本当にやるんだな?」
《BBの命令だからな。》
「オッケー。それじゃ、G2に後追わせるぜ?」
















海賊の襲撃を受けて占拠されたスーイト島のワッフル村。

長閑な町を襲ったのは『鎌鼬のウィンディ』が船長を務めるカマイタチ海賊団。
『鎌鼬のウィンディ』は懸賞金四億超えのカゼカゼの能力の自然系。

救援に向かった軍艦は五隻の艦隊。
そして、沈んだ軍艦の数も五隻。


「………つまり、私の出番って訳ね。」
「理解が早くて助かります、リンゴ少将。」
「いや、出来れば理解したくないんだけど。」
「クザン大将みたいな事言わないで下さい。」
「カインド大佐はお母さんみたいだよね。」
「………リンゴ少将が手の掛かる娘ですからね。」


私より年下の癖に生意気な……と思うけど、私と違ってカインド大佐はおつるさんに鍛えられたから、そりゃあしっかりもするか。

私なんて海軍で一二を争う自由人のガープさんに鍛えられたし。
ついでに言えば、もう一人の一二を争う自由人のクザンさんが上司だし。
真面目さなんて天と地の差だよね、仕方ない仕方ない。

怠そうに遠目で何とか視認出来る島、スーイト島を双眼鏡で覗く。

私の記憶では普段小船が多く停まる小さな港には、現在船が一隻しかない。
恐らく、それがカマイタチ海賊団の船だ。


「甘味の島を占拠とはねー……。甘いお菓子に目が無いビッグマムですら、スーイト島縄張りにしなかったのに凄い度胸ねー……。」
「スーイト島は天竜人への献上品である極上の甘味『セイメイ』を製造してる島ですからね。」
「流石の四皇も天竜人には手出ししないってのに………彼等は無知なのかな?」


ケラケラ笑いながらも、スーイト島の王都であるバームクーヘン王国ではなく、辺鄙な田舎であるワッフル村を襲ってる辺り、スーイト島の事情は知ってるだろう事は分かる。
天竜人への献上品を奪えば、バスターコールも真っ青な軍艦の大艦隊からの集中砲火だというのに………彼等の目的は何なのか?



ワッフル村は豊かな村ではなく、自給自足の本当に長閑な田舎だ。
お金目当てなら違う島を襲った方が、正直割に良い。

王都ならお金なんて腐る程有るかもしれないけど、バームクーヘン王国は世界政府加盟国だし、天竜人お気に入りの菓子を献上している世界的にも重要な都市だ。
とんでもないくらいの馬鹿じゃない限り、バームクーヘン王国を襲う奴はいない。



つまり、カマイタチ海賊団は『ワッフル村だから襲った』と考えられる。
少ない脳味噌から絞り出して、ワッフル村の情報を探していると、カインド大佐が私の嫌いな新聞を手渡してきた。
それに眉を顰めていると、一つの記事をトントンと指差して笑みを浮かべながら、無言で『読め』と言っている。
………怖いよ、カインド大佐君。


「何なに?……古い遺跡発見?歴史的大発見?歴史的価値の高い金銀細工が大量に発掘される?」
「その発掘現場がワッフル村近くの森だったらしいんです。」
「つまり、発掘品を奪うために占拠したって事?」
「リンゴ少将にしては物分りが早くて助かります。」


安定のカインド大佐の嫌味に頬を膨らませていると、ザワザワと騒ぎ出す声を感じた。
見聞色の覇気で意識を集中させると、声の出処は遠く彼方に見えるカマイタチ海賊団の船だ。

急いで双眼鏡を覗けば、どうやら向こうは此方の存在に気付いたらしい。
私の乗る軍艦セイントレディ号(悪魔狩りだから無理矢理船首に聖女像を付けられた)を落としに、戦闘の準備を始めている様子だ。


「大砲準備っ!!敵の砲撃に備えよっっ!!!!」
「「「「「はいっっ!!!!」」」」」
「敵はカマイタチ海賊団、トータルバウンティは八億超えるわっ!!総員、心の準備っ!!戦闘になるわよっっ!!!!」
「「「「「はいっっ!!!!」」」」」


カインド大佐は背中のスナイパーライフルを構えて、既に敵方へ狙いを定めている。
私も両腕の篭手を軽く調整して、戦う準備万端の状態で部下達全員に声を掛けた。
可愛い私の部下達は、全員が見事な敬礼で私の声に応え、綺麗に隊列を整え出す。


「砲撃用意ーーーーっっ!!!!」


スナイパーライフルで砲撃の距離を測っていたカインド大佐が声を張り上げると、砲撃班が大きな声で返事をした。


「…3…2…1…放てぇぇぇぇっっっ!!!!!!」


カインド大佐の声と共に、轟音を上げて放たれた砲弾。
その砲弾に飛び乗って、そのまま真っ直ぐカマイタチ海賊団の船へ……。


「……って、そう上手くいく訳ないか。」


カマイタチ海賊団の放った砲弾が一直線に此方に向かってくる。
ヒラリと砲弾から飛び降りて、月歩で空中を跳んで行く。


___ドォォォオオオンッッ!!!!

「危ない危なーい。」


カマイタチ海賊団から放たれた砲弾は、ついさっきまで私が乗ってた砲弾にぶつかり、爆発を起こした。
本当に危ないじゃないか、私が乗ってたのに。

月歩でぴょんぴょん跳ねながらカマイタチ海賊団の船へと空中を駆けると、目の前に突風が起こる。


「……まさか『悪魔狩り』がおいでとは。」
「別に来たくて来た訳じゃないわ。君らが暴れてくれたお陰で任務が降りちゃったの。」


目の前の風を纏う男は、手配書で見た『鎌鼬のウィンディ』で間違いなかった。

鎌鼬のウィンディは私に向かって足を大きく振って。


「鎌鼬っっ!!!!」
「嵐脚っっ!!!!」


風の刃を放ってきたが、こっちもこっちで風の刃を起こす六式の嵐脚を放つ。
二つの刃は鍔迫り合い、霧散した。


「ほゥ……流石は『勝利の女神』といったとこか。」
「その名前嫌いなのよねー。。」
「ハッ……噂に違わぬじゃじゃ馬女海兵らしいな。」
「それはどーも。」


月歩でぴょんぴょん跳ぶ私に対して足を風に変えて飛んでる鎌鼬のウィンディ。
……同じ『とぶ』でも全然違うのね、ちょっと格好良いじゃない。

取り敢えず、空中戦よりも陸上戦に持ち込みたいとこだけど……島遠いんだけど。
毎回の事なんだけど、先走りし過ぎたわ。


「追い付きましたよ、リンゴ少将。」
「流石、カインド大佐っ!!」
「もう慣れましたからね。」


相変わらずの嫌味も落ちた所で、私はセイントレディ号の甲板へと降りた。
それと同時に鎌鼬のウィンディは空中を飛んだまま、セイントレディ号の周りを旋回し出す。
風速で何周か旋回するとセイントレディ号の周りを強風が囲み、徐々に竜巻となっていくのが分かった。


「竜巻起こして船を上空に飛ばして海面に叩き付けて海の藻屑……って訳ね。」


まぁ、そんな事はさせないけど。

マストの天辺へと月歩で上がり、右手でマストを持って思い切りマストの床を蹴る。
その勢いのままでぐるぐるとマストを中心に全身で回転させて、トップスピードに達した所で。


「大嵐脚っ!!!!」


嵐脚で起こした大きな風の刃をセイントレディ号を囲む風の壁へとぶつければ、刃は壁を切り裂いて、そこから鎌鼬のウィンディの作った壁はどんどんと崩れていく。
そのままマストを蹴って剃で鎌鼬のウィンディの背後へと回り。


「チェックメイトよ、鎌鼬のウィンディ。」


海楼石製の篭手で拳骨を作って、鎌鼬のウィンディの頭に拳を叩き込む。


「三突拳(ミットケン)っ!!」


能力者には堪らない海楼石に加え、一瞬で三発もの武装色の覇気込みの拳に、鎌鼬のウィンディは目をグリンと回して白目を剥いて。
そのまま海へと落ちて行った。


「残党は任せたわよ。」


セイントレディ号の甲板へと降りた私は、そのまま船内へと歩いて行く。
それに敬礼をしながら列を成す部下達にヒラヒラと手を振って、自室へと向かった。


「A班は海に落ちた船長ウィンディを捕まえろっ!海楼石の手錠を忘れるなっ!!B班は敵船に乗り込む準備!C班はそのまま帆と舵を!D班砲撃の手を緩めるな!E班は敵方の砲弾を落とせ!」
「「「「「はっ!!!!」」」」」
「ウィンディ海賊団を落とせぇぇぇぇっっっ!!!!!!」
「「「「「はいっっ!!!!」」」」」


カインド大佐の指示に迅速に対応する部下達。
本当に優秀な部下を持ったな、と。

甲板から響いてくる怒号を聞きながら、私は欠伸を噛み殺して昼寝をするためにも自室のドアを開けた。







※鎌鼬のウィンディ
windy:風の吹く、風の強い
※スーイト島:『スイーツ』から
※セイメイ
作者の大好きな某県の銘菓『いのち』から『いのち』→『生命』→『セイメイ』
※三突拳:『三』度『突』く『拳』と野球のミットを掛けただけです
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